小説/文学

むらさきのスカートの女|今村夏子

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芥川賞受賞当時に話題となって、TikTokの本を紹介するインフルエンサーが激推ししていた記憶があります。その紹介で引き込まれて買ったのですが、実際に読んでみたらショート動画で煽っていた本の内容とは全然違った印象でした。本そのものはとても面白かったです。

第161回芥川賞受賞作

むらさきのスカートの女

著者

今村夏子

出版

朝日新聞出版

刊行日

2019年6月7日

あらすじ

語り手である私、通称「黄色いカーディガンの女」が、執拗に「むらさきのスカートの女」を観察して、徹底して一人称視点で進行する物語。

むらさきのスカートの女の容姿の子細から、職歴、住んでる場所、日々の習慣まですべて把握している私。その目的はただ彼女と友達になりたいから。私はむらさきのスカートの女が、自分と同じ職場で働くようにどうにか仕向けていきます。

どうにか彼女を同じ職場に導いた私は、それからもずっと観察を続けていきます。女社会の職場、不倫、そしてむらさきのスカートの女の変化…。次第に孤立していく彼女を今日も私は観察を続けていく。

感想

初めて読む作家でしたが、期待以上の面白さ、純文学よりもエンタメ寄りな感じで楽しめました。客観的な描写や語りがなく、主人公の一人称視点で話し言葉のように進むので、文章が読みやすいかと思います。そして終始漂う不穏な空気が特徴的。

どこまで観察してるのか、なぜさっさと話しかけないのか、主人公は何が目的なのか?こんな風に気持ちを駆り立てながら読み進めることになるでしょう。

話は分かりやすいですし、ストーリーも不穏な展開を秘めながらも退屈なく進んでいきます。スラスラと読みやすい小説であり、ちょっと踏み込んでみると考察できる楽しみもありました。

Unreliable narrator

信頼できない語り手

この主人公、実は超嘘つきの可能性が高く、彼女の言動には多くの嘘が混じっていると断定していいでしょう。

このような手法を「信頼できない語り手」と呼び、ミステリー作品で読者のミスリードを誘うためによく使われます。それを純文学に持ち込んだのが、この作品に独特の雰囲気を醸し出しているのかもしれません。

彼女が嘘つきである決定的な証拠がありました。主人公は下戸だから一切お酒を飲めないと周知させていましたが、彼女はむらさきのスカートの女のデートを尾行した際に、店でビールを3杯も飲んで食い逃げしています。このように決定的な証拠を残しつつも、主人公である語り手が信頼できない言動は多く描写されています。

昨夜のむらさきのスカートの女が何色の何を穿いていたのか、わたしはどうしても思い出すことができなかった

150p

この言動からも、もっと言えば『むらさきのスカートの女』自体が形骸化してないかとすら思われます。客観的なむらさきのスカートの描写がないこと、ただそう呼んでいるだけでむらさきのスカートを着用してるのを観測している場面もありません。

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谷口ゆーい
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文装舎|編集長
読書ブログやコラムを書いています。積読はしない派ですが、なかなか0冊になりません。本棚には心から気に入った本と、装丁が素晴らしい本を残しています。装丁が好きで自分でも製本をするようになりました。
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