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【予告犯】カリスマダークヒーローとなった犯罪正義

一巻~五巻程度のボリュームで完結する漫画が好きで、この漫画はとくにお気に入りの作品です。映画化もされていましたが、原作から大きくそれずに比較的まとまっていた気がします。

社会レールからどこか外れていたり、世間との軋轢を感じている人にとって、見方になってくれるような内容です。

筒井哲也

愛知県出身。2002年、月刊少年ジャンプにて『最弱拳銃士ルービック』でデビュー。主な作品に「ノイズ」「マンホール」「ニーティングライフ」など。

あらすじ

動画サイトにて新聞紙を頭に被った男が犯行予告をアップロードしました。後日その犯行は実行され、その後も新聞紙男による同様の犯行予告が繰り返されます。

警視庁サイバー犯罪対策課は新聞紙男の正体や動機を探るべく本格的に捜査を開始。

新聞紙男が犯行を行う対象はいつも何かしらの悪人への制裁という形をとっており、ネット上では新聞紙男を支持する層が増えてきます。新聞紙男の犯行予告と悪人への制裁は社会現象へと発展し、カリスマ的存在へとなっていきました。

同様の犯行を繰り返し世間の注目が集まってきたタイミング。次の予告は某ネットサービス企業に勤める会社員が、採用面接中SNSにて求職者に対する差別的な晒上げ実況を行っていたことを糾弾しました。求職者は32歳で数年間の空白期間があり、放浪したのかニートだったのかわからないが、何かの事情で社会のレールから外れた男が社会復帰をしようと真面目に頑張っている人間を誰が笑いものにする資格があるのかと怒りを発露。

社会的弱者の代弁者として正義悪を実行した新聞男は着実に世論を味方につけていきます。一方でサイバー犯罪対策課は新聞男の行方を掴めずに捜査に苦戦していました。

標的は拡大し環境保護団体や衆議院議員などを狙い、制裁の内容も次第にエスカレート。警察も新聞男のしっぽを掴みはじめ、犯行予告をしている漫画喫茶をつきとめられるも、新聞男の支持者であった店員の計らいにより逃亡します。

新聞男がなぜ社会的弱者の代弁者たる立場で犯行を続けるのか、新聞紙に隠されたその正体、連続犯行の最終的にいきつく目的を明らかにする過去の事件とは――。

書評

三巻完結と短いながらも非常に綺麗にまとまった漫画でした。

新聞紙男の正体、動機、目的、すべてが明らかになった上、最後まで警察も世論も新聞紙男の策の上に転がされます。

犯罪とはいえ世の中の悪人に制裁を与えてだんだんと大衆に支持されていく復讐劇のような構成もすっきりしていいですね。警察から逃れるアリバイ対策もしっかりしており、もはや世間ではダークヒーローのようなカリスマ性を持っていきます。

特に前半は新聞紙男の正体が読者にもわからないうち、どこまでが彼の計算なのか底が見えない筋書きも読んでいて面白いです。そして後半の新聞紙男が生まれる経緯に至った壮絶な過去、犯罪を共有して築き上げた歪んだ仲間たち。

新聞男の根底には社会のすべての搾取される側の人間を救いたい、彼らにも自尊心が必要不可欠でそれがないのは生きている状況とは言えないと断言します。

自尊心を奪うやつが許せない。

それは街ですれ違う視線、給湯室から聞こえる会話、給料明細のよく分からない項目、偉そうな態度で職質をかける警察官など、社会のどこにでも隠れている。

生きていく中で、社会へのアンチテーゼを表出できずにくすぶっている、そんな人の心がちょっとすっきりする漫画でした。

予告犯

¥627

予告犯
筒井哲也

正体不明の新聞紙男による計画的犯行予告のクライムコミックス、全3巻。

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【ゴリラ裁判の日】

2016年に実際に起きた「ハランベ事件」をモチーフにした異色の法廷サスペンス小説。

ゴリラと人間の関係性を通じて「正義」や「人間とは何か」という深いテーマを問いかけています。

須藤古都離

本作「ゴリラ裁判の日」で第64回メフィスト賞を満場一致で受賞してデビュー。他に「無限の月」「ゾンビがいた季節」など。

あらすじ

物語の主人公は、アメリカの動物園に住むメスゴリラのローズ。彼女はカメルーンのジャングルで生まれ、研究所で手話を学び、人間と意思疎通ができるほどの高い知能を持っています。動物園の生活の中で、オスゴリラのオマリと出会い、夫婦として幸せな日々を送っていました。

しかし、ある日、動物園で悲劇が起こります。ゴリラの囲いに人間の子供が落下し、オマリがその子供を守ろうとするも、興奮状態に陥ったと判断され、動物園側によって射殺されてしまいます。この事件をきっかけに、ローズは夫の死を不当だとし、動物園を相手取って裁判を起こします。

裁判では「人間の命と動物の命、どちらを優先すべきか」という倫理的な問題が争点となりますが、最初の裁判でローズは敗訴します。判決に納得できないローズは、「正義は人間によって支配されている」と感じ、再び裁判に挑むことを決意します。

「ゴリラを見に来るのに、私の中に人間を見てるんだよね。みんな私を見に来ているみたいで、実は違う。それぞれが見たいと思ってるものを見に来てる」

十章 195p ローズ

書評

斬新な設定と深いテーマ性が高く評価されています。ゴリラが裁判を起こすという一見シュールな設定ながら、物語は非常にリアルで感動的です。読者はローズの視点を通じて、動物と人間の違いや共通点、そして社会の不平等について考えさせられます。

単なるフィクションではなく、現実の事件や科学的知見をもとに構成されていて、読者に新たな視点を提供する良作といえるでしょう。

人間とは何か?

ローズのように高い知能を持ち、人間と意思疎通が可能な存在は「人間」とみなされるべきなのか。法律上「人間」の定義がないことを背景に、作中では人権や倫理の境界が問われます。

特に言葉を持つことを人間の特徴とするならば、ローズにとって言葉は魔法でした。目の前にいる誰かとお互いの気持ちを伝えあい、理解し合うための優しい道具です。一方で言葉が武器になることもあり、ローズは言葉の力を前にして動物であることの本能との間に揺れます。

裁判において人間という言葉を使うときの定義に、他国の人は含まれるか、肌の色が違う人は、ならばゴリラは?社会通念をアップデートするのは厳しいが、いままさに人間という言葉が包括する意味が大きく変わろうとしている場面を作り出しています。

動物と人間の命の価値

物語の中心には動物の命と人間の命の優先順位をどう考えるべきかという問題があります。オマリの射殺が正当化される一方で、ローズの視点を通じて動物の命の重みが描かれていました。

また、ローズの過去や日常生活が詳細に描かれることで、彼女が単なる動物ではなく、感情や知性を持つ存在として読者に強く印象付けられます。彼女の「ゴリラ格」ともいえる人格が、物語の説得力を高めているなと感じます。

法と正義の限界

法律が人間中心に作られている現実を浮き彫りにし、正義が必ずしも普遍的ではないことを示唆します。ローズの裁判を通じて、読者は「正義とは何か」を考えさせられます。

敏腕の弁護士ダニエルがローズに説教をする場面が印象的でした。ローズが最初の裁判で負けたときに司法制度を馬鹿にしたからです。

「公平な社会を築くために人間が努力している間、ゴリラは何をしていた?少しでも手伝ってくれたか?君みたいなよそ者に、司法制度を侮辱する資格があるのか?人間が正義を独占しているんじゃない、人間が正義を作りあげてきたんだよ。もちろん、誰のためでもない、自分たちのためだ。公正な社会を達成するために。自分が裁判に負けたから法廷を侮辱するってのは、僕たちみたいな司法に関わっている人間にとっては許せるものじゃないんだよ」

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【彼女は頭が悪いから】東京大学誕生日研究会の事件をもとにした小説

2016年に実際に起きた東京大学の学生らによる集団強制わいせつ事件に着想を得て執筆されました。ただし、登場人物や物語の詳細はすべてフィクションであり、事件のノベライズではありません。

事件を通じて浮き彫りになる社会の格差、ジェンダーの不平等、そして人々の偏見や差別意識を描き出しています。特に、加害者と被害者の生い立ちや心理的背景、事件後の被害者へのバッシングなどが克明に描かれています。

タイトルの「彼女は頭が悪いから」という言葉は、実際の事件の公判で加害者の一人が発した言葉に由来しており、被害者を見下す態度を象徴しています

姫野カオルコ

1990年「ひと呼んでミツコ」を講談社に持ち込み32歳でデビュー。2014年「昭和の犬」で第150回直木賞を受賞。本作「彼女は頭が悪いから」は第32回柴田錬三郎賞を受賞。

あらすじ

物語の中心となるのは、以下二人の登場人物。

  • 神立美咲 横浜市郊外の普通の家庭で育ち、偏差値48程度の女子大学に通う女子大生。
  • 竹内つばさ 渋谷区広尾の官僚家庭に生まれ、東京大学理科I類に進学した男子学生。

美咲は地元の進学校を卒業後、家族に祝福されながら女子大学に進学します。一方、つばさはエリート家庭で育ち、東大に進学するも、周囲の富裕層や優秀な同級生に劣等感を抱くことがあります。

二人は大学生になってから偶然出会い、最初は恋愛のような関係が始まるかに見えます。しかし、つばさを含む東大生5人が引き起こした強制わいせつ事件により、二人の関係は加害者と被害者という最悪の形で交わることに。

事件後、被害者である美咲は「勘違い女」として世間から非難され、加害者たちの未来を潰したとまで言われます。このような状況を通じて、学歴や社会的地位がもたらす偏見や、被害者バッシングの問題が浮き彫りにされます。

彼らはぴかぴかのハートの持ち主なので、裸の女がまるまって、ううううと涙を垂らしている状態は、想定外であり、優秀な頭脳がおかしてはいけないミス解答だった。

結論 彼らがしたかったことは、偏差値の低い大学に通う生き物を、大嗤いすることだった。彼らにあったのは、ただ「東大ではない人間を馬鹿にしたい欲」だけだった。

第四章 463p

書評

結構長い本なのですが、中盤に差し掛かってようやく二人の主人公が話の中で交差します。つまり本書の前半~中盤にかけてじっくりと、人物の育ってきた背景や性格について描いているわけです。そうして人物の思想的な輪郭を丁寧に追っていくことで、どうしてこのような歪んだ事件が生まれてしまったのかを表現できていると思います。

姫野カオルコは、この小説を通じて、事件の背景にある社会的な構造や人々の無意識の差別意識を掘り下げようとしました。特に、加害者たちが持つ「自分たちは優れている」というエリート意識や、被害者が受けた不当な扱いに焦点を当てています。また、事件の詳細を忠実に再現するのではなく、フィクションという形で普遍的な問題を描くことを意図しています。

実際の事件はWikipedia等でも簡単に調べられますが、事件の概要だけを追ってもどうしてこのような結果が生まれたのか想像し難いのですね。それが小説となって人物の思想や心情の機微などが表現されることによって、よりリアルに感じられるようになります。

だんだんと読むのが辛くなってくる本ですが、自らの謙虚さを保ち、他者への尊敬を忘れないために、一読して良かったと思います。

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【コーヒーの絵本】あなたにとっての美味しいコーヒーが分かる絵本

この絵本を初めて見かけたのは、私が北海道に住んでいた頃のとあるカフェでした。その時にパラパラと読んで「意外と内容しっかりしてるな」と思っていました。

それ以降もカフェでこの絵本を見かけることが度々あり、かなり評判の良い本なのだということを知りました。

ただの絵本と侮るなかれ。美味しいコーヒーを求めるなら、最初の一冊におすすめのコーヒー入門本です。

庄野雄治

旅行会社に勤務の後、2004年に5キロの焙煎機を購入しコーヒーの焙煎を始める。2006年、徳島市内に「aalto coffee (アアルトコーヒー)」を開店。現在は、「aalto coffee and the rooster」と店名を変え、コーヒーの焙煎をしながら、レーベル「Hemisphere」を立ち上げ、リトルプレスやCDをリリースするなど活動の幅を広げている。

美味しいコーヒーってなんだろうという疑問に答える絵本。「美味しい」は人それぞれ違う主観的なものですが、その前提を踏まえてまず正しいコーヒーから、それぞれの「美味しい」の求め方を指南してくれます。

豆の産地や銘柄も大事ですが、まずは基本的な知識があったほうが間違いなく美味しいコーヒーが飲めます。

はじめにコーヒー選びで最も大事なことは鮮度。次に挽きたてであること。三つ目に好みの焙煎度を探ることです。

豆の挽き具合でも味は変わるが、中挽きを起点に探ると好みがわかります。 水は軟水であれば大丈夫。道具選びは無理をしないで、生活にあるスタイルで、コーヒーメーカーなりドリップなり自分に合うものを選びましょう。

紹介されているペーパードリップのレシピは以下の通り。

  • 豆 14g
  • 水 180ml

もし2杯以上ドリップするなら1杯ごとに豆を10g追加して、水の量は出来上がり量で計算しています。さらに湯の注ぎ方や、ドリッパーを外すタイミングなども丁寧に描かれていました。

最後になにより大事なことはコーヒーは自由に楽しむこと。 ブラックが一番ではなく、ミルクを入れたり、アレンジしたり。 酸味や苦みが気になるならお湯を少し足したり。「コーヒーとはこういうものである」といった固定観念や誰かの情報にとらわれると楽しめなくなってしまいます。

誰かが美味しいというコーヒーではなく、自分の中に美味しいと思えるコーヒーの基準を探っていくのがコーヒー楽しみです。 嗜好品だからこそ、豊かに楽しむため、丁寧に向き合ってみましょう。


ちなみに同シリーズに紅茶の絵本もあります。

コーヒーの絵本

¥1,100

コーヒーの絵本
庄野雄治
平澤まりこ(絵)

かわいい絵と楽しいお話でコーヒーのことがよくわかり、おうちのコーヒーがグッと美味しくなります。初心者のための、世界で一番やさしいコーヒーの絵本

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【ツチノコ撮影日誌】岐阜県東白川村のツチノコ本気捜索へ行く前に読んだ本

私は岐阜県在住なので、図書館の岐阜に関連した書籍の特設エリアはついチェックしていきます。

ツチノコ撮影日誌は岐阜県東白川村をメインフィールドに、ツチノコの歴史や文化を追ったドキュメンタリーです。

ツチノコが架空の生物だということは多くの人の共通認識だと思いますが、東白川村では30年以上にわたってツチノコ振興イベントが継続しており、ツチノコを信じている人も多いことをご存じでしょうか。

今井友樹

1979年岐阜県東白川村生まれ、ドキュメンタリー映画監督。日本映画学校(現・日本映画大学)卒業。2004年に民族文化映像研究所に入所し、所長・姫田忠義に師事。2014年に劇場公開初作品・長編記録映画『鳥の道を越えて』を発表。2015年に株式会社「工房ギャレット」を設立。

概要

ツチノコの特徴は、平たい頭部に首のくびれ、太い胴、黒やこげ茶の大きなウロコ、細くて短い尻尾、大きく鋭い目。毒はあるとかないとか諸説あり。

その歴史は古く縄文時代から生息したといわれています。岐阜県高山市の飛弾民族考古館には6000年前のツチノコ形の縄文石器が確認されています。江戸時代中期の図説「和漢三才図会」には野槌蛇として絵入りで紹介されているようです。

東白川村では「ツチヘンビ」と呼び、隣の中津川市付知町では「ヘンビの大将」白川町黒川では「ころがりヘンビ」などと全国的にもさまざまな呼び名があります。

ツチノコの文化的・民俗学的な話に触れつつ、ツチノコの目撃情報や生息地での民家のインタビューなども記載されていました。

ツチノコブーム

最初のツチノコブームは故山本素石の「逃げろツチノコ」から。

週刊少年マガジンにて「幻の怪蛇バチヘビ」の連載をした矢口高雄の功績もあって、子供を巻き込んでブームを席巻しました。そしてドラえもんや水木しげるの漫画にも登場してきました。

昔の人は想像力が豊饒で自然のひとつひとつから物語を織りなしていき、鼠を飲み込んだ蛇をツチノコと読んだりした可能性も否定できないでしょう。

本書ではツチノコに似ている生物にヤマナメクジとアオジタトカゲが紹介されています。個人的にはアオジタトカゲの手足が隠れていれば想像のツチノコにそっくりなので、ペットで逃げ出したツチノコを見間違えた説が濃厚だと思っています。

今井監督のツチノコ取材

実は本の骨子になっているのは著者である今井監督の自伝であり、どうしてツチノコを題材にした映画を撮るのか、それらの背景をベースに自分がどのようにしてドキュメンタリー映画監督への道を歩んできたか、そしてどんな作品を撮ってきたかの話が語られていました。

ツチノコ映画のための取材と今井監督の記憶をたどる自伝が交互に構成されていますね。

取材の進行が時系列に沿って、着実にツチノコと東白川村の歴史にせまっていくのが本書の見どころ。ツチノコを見た人や目撃談を聞いた人など、ツチノコを信じている人の中には、しっかりとツチノコの存在が根付いているということが大事です。

  • 2016年8月

    ツチノコ取材開始

    東白川村と近郊地域の新聞の折り込みチラシにツチノコ目撃情報の提供を呼び掛ける。東白川村元村長 桂川眞郷インタビュー。立村100周年と竹下登政権時の1億円ふるさと創生事業などもあって、ツチノコ捜索イベントが村おこしとしてすんなり議会を通る。

  • 2017年6月

    女性3人のインタビュー

    岐阜県中津川市付知町にて、谷間の集落でツチノコが斜面をコロコロ転がっている目撃談。茶畑でツチノコを見たという話。

  • 2017年7月

    お茶の生産者インタビュー

    東白川村のお茶の生産者 安江辰也インタビュー。ツチノコの背景として欠かせない東白川村の戦後史の取材がメインで、昭和20年代に村の主幹産業を養蚕からお茶栽培に変えていく普及員としての活動をうかがった。

  • 2017年8月

    民俗学者インタビュー

    北海道にて民俗学者 伊藤龍平 インタビュー。ツチノコについて民俗学的に発言している数少ない学者の一人。著書「ツチノコの民俗学ー妖怪から未確認動物へ」

  • 2017年9月

    本村役場職員インタビュー

    本村役場職員 安江誠インタビュー。産業振興課で最初からツチノコ捜索イベントを担当しており、以来長期間関わる。

  • 2017年9月

    白川町でツチノコ目撃者を含む座談会を企画

    比較的新しい目撃情報で2016年のこと、茶畑で働いていたところ、3人が同時に茶畑の通路でツチノコを目撃。ツチノコの存在を信じて取材をスタートしたわけではないが、かといって「いない」とも言い切れない、どっちつかずのニュートラルな格好をしていたが、取材をするスタンスとして確実にツチノコの存在感が大きくなっていく。

  • 2017年12月

    村の中学生に意識調査

    意識調査として村の中学生に対してアンケート。「いると思う」という子もいる反面「いるはずない」と答える子もいる。

  • 2018年4月

    ツチノコ探検懐古展の事前取材

    奈良県下北山村で野崎和夫とツチノコ探検懐古展の事前取材。30年前にツチノコイベントを開催した中心人物。

  • 2018年5月

    つちのこフェスタ第30回中止

    東白川村つちのこフェスタ30回目は前日の大雨で中止。つちのこ神社で祭礼が例年通り行われる。

  • 2018年5月

    ツチノコ探検30年記念シンポジウムを取材

    奈良県下北山村にてツチノコ探検30年記念シンポジウムを取材。

  • 2018年6月

    野崎和生インタビュー

    改めて下北山村で野崎和生インタビュー。イベントのプロデューサ的な立場として、関西圏から人を呼び込むツチノコ共和国などの遊び心溢れる工夫をしてきた。

  • 2018年8月

    東白川村で講演会

    伊藤龍平を北海道から誘致して「ツチノコのいま、むかし」講演会を東白川村で行う。

  • 2018年9月

    東白川村現村長インタビュー

    東白川村現村長 今井俊郎インタビュー。ツチノコを起爆剤とした村おこしについては、村で育った人はツチノコはいるものだと前提にしていて、それがなくなったのは環境の変化だと感慨を抱く。上の世代はツチノコはいるものだとしている。

  • 2019年1月

    新田雅一 インタビュー

    ツチノコブーム発祥の故山本素石の作ったノータリンクラブの創立メンバー最後の生き残りである新田雅一の住む神戸市でインタビュー。民俗学者の伊藤龍平も同行した。クラブは存在しているが実質的な活動はしていない。

  • 2019年4月

    広島県上下町インタビュー

    広島県上下町の松井義武、平野巌インタビュー。東白川村や下北山などと同時期に町おこしを試みた地域。食糧事務所のお堅い仕事に就く所長の目撃談から始まり、うそをつく人でもないので捜索イベントが開催された。しかし2年で終わる。表向きは危険だといわれる生き物を探すイベントへの苦情だが、実際のところは存在しないものを探すという意味のないイベントに必要性がないというのだろう。

  • 2019年4月

    岡山県赤磐市インタビュー

    鈴鹿真一、藤本誠一、青山敏夫インタビュー。岡山県赤磐市にて。彼ら「つちのこ研究会」が窓口となり、ツチノコ関連イベントが行われていた。発見時の懸賞金2000万円は町が提供する。発端は平成12年にツチノコらしき死骸が発見されたが、鑑定に出すがヤマカガシの変種だった。この話題性、岡山の大蛇伝説などの蛇との因縁もあり、捜索イベントなど同時期に行われてツチノコの里となった。

  • 2019年4月

    兵庫県インタビュー

    兵庫県美方郡香美町で宮脇壽一にインタビュー。ツチノコ目撃例が多く、「つちのこ探検隊」を企画し捜索を行ったりした。懸賞金ではなく土地100坪が進呈される。今も存続しているが活動は緩やかで、親睦や交流コミュニティのものだ。
    兵庫県宍粟史にて平瀬景一に取材。町役場の職員をしていた。1992年当時に2億円の懸賞金をぶち上げて話題になったが、行政の「どうせいない」という驕りからくる話題性の為のエスカレートに嫌気がさし、ツチノコハンターたちのカンに障った。2億の財源をどうするのか聞くと、そのツチノコを売ればいいという拝金主義的なやり取りに、ノータリンクラブの人たちも微妙な印象を持っていた。

  • 2019年5月

    東白川村つちのこフェスタ過去最多4000人の参加者s

    30回目の東白川村「つちのこフェスタ」が開催される。過去最多の4000人の参加者。単にツチノコを探すだけでなく、ツチノコの模型を見つけたら景品がもらえたり、時期的に山菜が豊富なのでそれを楽しみに来る人もいる。

  • 2019年7月

    京都市取材インタビュー

    山本素石のツチノコ遭遇場所である京都市北区雲ケ畑加茂川支流へ取材。京都国際日本文化研究センターにて「故郷の喪失と再生」の著者、安井眞奈美インタビュー。ふるさと創生事業の背景と評価、東白川村のツチノコを活用した取り組みについて意見をきく。

  • 2019年11月

    山本素石 ゆかりの地

    京都市雲ケ畑の林業に従事する安井昭夫インタビュー。山本素石がツチノコを目撃した土地で他の様々な不可思議現象について調べた。妖怪譚、へびの階段、地元の古老たちから聞き取ったものなど。

  • 2019年11月

    糸魚川つちのこ探検隊インタビュー

    新潟県糸魚川市、2005年発足から毎年捜索を行っている民間の有志で運営され、精力的かつ地道な活動は山本素石のいう本来のツチノコ探検隊を体現している。隊長の丸山隆志、事務局の清水文男、旅館経営の斎藤武司に取材。全員スタートからのメンバー。発足翌年に探検隊の公募が始まり、地元の企業6社から懸賞金1億の資金をつくり、回を重ねるごとにグッズやテーマソングなどを制作していった。

  • 2020年5月

    コロナ渦

    コロナ渦で取材が進まない。息子と父親との釣り風景を撮影して映画のシーンとして使う。以降、村内の様子や自然の撮影などが続く。

  • 2021年6月

    ジャパン・スネークセンター取材

    群馬県太田市、日本蛇族学術研究所(ジャパン・スネークセンター)取材。日本各地でツチノコ発見となれば、まずここで鑑定されるのが普通。ツチノコ=ヤマカガシ説が有力だという話に意見を求める。

  • 2021年9月

    動物学者インタビュー

    東京都町田市、動物学者でUMAの生みの親である實吉達郎インタビュー。ツチノコのようないそうでいない動物は1970年代まではリアリティを保っていたが、1980年代に入るとUMAという言葉ができツチノコもそれに分類され、このことが心性に影響した。

  • 2021年10月

    ツチノコブームの分析

    東京都中野区、著述業の山口直樹「幻のツチノコを捕獲せよ‼」にインタビュー。ツチノコブームが起きた現象と、それが鎮まる過程について分析する。

  • 2021年12月

    アオジタトカゲの取材

    兵庫県淡路市、淡路ファームパークイングランドの丘にて、アオジタトカゲの取材。一般に出回るツチノコの画像は、手足の隠れたアオジタトカゲそのものといっていいくらい酷似している。元来オーストラリアに棲息するトカゲで、大きいと70㎝程になる。胴体が太く頭が小さい、足は短く、舌が青い。1970年ころからペット用として日本に入り、普通の家でも飼育される。大1次ツチノコブームとも時期が合う為、ペットのアオジタトカゲが逃げ出して山林や田畑で生き延びたものが目撃されたのが最も有力。だが江戸時代の文献や明治からの目撃談には該当しないだろう。

  • 2022年10月

    白川茶屋の取材

    東白川村、平成初めに開店した白川茶屋の取材。ツチノコブームの加工品などを販売しており、ツチノコに頼らず郷土料理なども商品化している。

  • 20123年5月

    東白川村つちのこフェスタ再開

    東白川村つちのこフェスタ取材。3年のコロナで中止から再開。4000人の受け入れには無理があると、参加者を2000人に絞った。メディア取材は17社、フランス国営放送も取材で訪れていて、村の観光収入は3千万近くに。

  • 2023年8月

    ドキュメンタリー映画完成

    東白川村にて100分版完成披露上映会。

  • 20123年10月

    再構成版上映

    奈良県下北山村、完成披露上映会。前回のを再構成編集して、今後も修正を重ねる。

  • 2023年11月

    70分版完成・初号試写

    取材地10県40か所以上。取材した人数は60名以上となった。

書評

東白川村ではツチノコを地域振興の一つにしており、30年以上にわたって毎年ツチノコ捜索イベント「つちのこフェスタ」を開催しています。これを実在しない架空の生物を追うくだらない催しととるか、ツチノコにロマンを求めて楽しむ恒例行事ととるか。

参加者の多くは名古屋から来てるというのもあり、普段自然に触れない人たちの息抜きやリフレッシュのようなものが本質でしょう。私もつちのこフェスタに行ってきましたが、子供から大人まで楽しめる非常に良いイベントだと思いました。

岐阜県以外、全国各地でツチノコの伝承があって捜索イベントや催しが行われてきましたが、結局つちのこに対する熱量を維持できずに下火になっていくのが多いようです。東白川村がすごいろことは村を上げて、それが数十年続いているということ。さらに村の名産品である檜とお茶もしっかりPRしています。

伝説となる物語には終わりがあってめでたしとなりますが、ツチノコの物語には終わりがなくそれが魅力になっているのかもしれません。

いま映画学校で「映像民俗学」を教えているのですが、民族に関する記録映画を民俗「学」と学にしていいのかどうか疑問がありますね。「学」としてしまうとその時点で型というか形式ができてしまう。民俗や習俗を記録するというのは、そうした型がないのではないかと思うんです。

今井友樹
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【人生、このままでいいの?】最高の未来をつくる11の質問ノート

どんなとき幸せで、どうすれば幸せが増えるか。この本の最初の質問です。

極論すべての人々は幸福を求めて生きていると思われますが、いざこのように質問されると、そういえば自分にとっての幸福ってなんだっけと思いとどまるかもしれません。そして幸福だと思っていたものが、実は他人の欲望や幸福をなぞっただけのものだったりするかもしれません。

私たちが幸福な未来を切り拓いていくための質問がこの本に用意されています。

河田真誠

広島でデザイン会社を経営し、1000人規模の講演会を開催する団体を主宰。より心地よい生き方をするために、2010年からは活動の拠点を東京に移し「質問家」としての活動をしている。生き方や考え方、働き方などの悩みや問題を、質問を通して解決に導く「しつもんの専門家」として、企業研修や学校で授業を行い、日本だけでなく世界各地でも仕事をしている。

概要

本書は11の質問によりあなた自身の力で幸福に導く道筋に気づかせようとしてくれます。

書き込み式のノートのような構成なので、読書というよりも考えながら自分を見つめなおすワークショップだと思ったほうがいいです。

例えば本書の中から6つ目の質問「どんな自分でいたいか」

自分の性格は自分自身によって形成されてきたものです。環境が要因しているものもあるかもしれませんが、同じ環境にいる人でもそれぞれ違うように人は成長します。つまりどのように生きていくかは自分の選択によって作られるのです。

それを踏まえて自分をどんな人だと思うか、周りからどんな人だと思われたいか、自分のどこが好きで、自分のどこが嫌いか、自分らしく居られる場所はどこか、心地良いと思うのはどんな時か。

これくらい深堀りして一つの質問を突き詰めていきます。

これらを問いかけをその場でじっくり考えても、意識し続けないと自分のことでもすぐに忘れてしまいます。書き出したものを壁に貼ったり、待受けにしたり、寝る前に振り返ったり。そして必ず行動に移すこと。

同じ質問でも時間がたって、環境が変わったり価値観が変われば、回答も変わってくるでしょう。時々振り返って繰り返し質問に答え直すことが大事です。

このような自己分析やキャリア概論などは学生のときにやったことがある人も多いかもしれませんが、社会に出た大人になってからやると、また答える内容も変わってくると思います。

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【サクッとわかるビジネス教養地政学】世界の国同士のバランスがざっくり分かる一冊

世界の情勢や、国同士の立ち位置や力関係など、ぼんやりニュースを見ているだけでは見えてこない視点を、地政学というアプローチで分かりやすく解説してくる本。

結局は土地を持つことがすべて。軍事的に優位な立地、経済的に豊かな土地、このような恵まれた土地の有無が国同士の駆け引きの肝になっているのです。

著者のブログ「地政学を英国で学んだ」は国内外問わず多くの専門家から注目され、最新の国家戦略論を紹介しています。

※2022年2月からロシアとウクライナの戦争が起こったため『ウクライナ侵攻の真相』が加筆・PDF配布されています。

奥山真司(監修)

地政学・戦略学者。戦略学Ph.D.(Strategic Studies)国際地政学研究所上席研究員。多摩大学大学院客員教授。カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学卒業後、英国レディンク大学院で、戦略学の第一人者コリン・グレイ博士(レーガン政権の核戦略アドバイザー)に師事。地政学者の旗手として期待されており、ブログ「地政学を英国で学んだ」は、国内外を問わず多くの専門家からも注目され、最新の戦略論などを紹介している。現在、防衛省や大学などの教育機関で地政学や戦略論を教えている。また、国際関係論、戦略学などの翻訳を中心に、若者向けの国際政治のセミナーなども行う。

概要

本書ではとくにアジア(中国VSアメリカ)、中東(イランVSアメリカ)、ヨーロッパ(EU・NATO VSロシア)の地理的な衝突から国のふるまいをマクロな視点で言及しています。

地政学を戦略に活用すれば「道」や「要所」をおさえてエリアを支配するのが効率的でしょう。

国の存続に物流は欠かせないものとなっており、地理条件から経路が限られている要所をおさえるのが戦略です。

地政学の基本的な概念

地政学は地理的な条件をもとに、他国との関係性や国際社会での行動を考えるアプローチ。

世界の覇権国アメリカは関与レベルを以下の段階にしています。

  • 全土に出向いて軍隊を常駐させ国を管理下におく完全支配
  • 重要なエリアにのみ軍隊を駐留させ必要な部分のみコミットする選択的関与
  • 領土に出向かず離れた位置から必要に応じて圧力をかけるオフショア・バランシング
  • 対外戦略の1つとして軍隊を撤退させ重要なとき以外は派兵しない孤立主義

突出した強国をつくらず勢力を同等にして秩序を保つ国際メカニズムにあたるバランス・オブ・パワー。

海路(ルート)上の絶対に通る関所をチョーク・ポイントとし、具体的には陸に囲まれた海峡や、補給の関係上必ず立ち寄る場所のことをいいます。パナマ運河、マゼラン海峡、スエズ運河、イギリス海峡、台湾海峡など。

大陸国家によるランドパワー、海洋国家によるシーパワーは歴史的に大きな国際紛争を伴って常にせめぎ合ってきました。これらを両立することはできず、大陸国家が海洋進出をすると大抵失敗してきた歴史があります。

ハートランドはユーラシア大陸の心臓部で現在のロシアあたりのこと。寒冷で住みづらく文明は栄えていません。リムランドはユーラシア大陸の海岸線に沿った沿岸部で経済活動が盛んなエリア。世界の大都市の多くが集中しています。つまりリムランドは、ハートランドのランドパワーと周辺のシーパワーという、勢力同士の国際紛争が起きやすい場所となります。

関係国とのリアルな情勢を知る

日本は島国という地政学的な優位性で独立を保ってきましたが、長きにわたりそれを維持できる国はほとんどありません。日本の鎖国が破られたのも必然だったのです。

次に北方領土問題について。なぜロシアから返還されないのか3つの理由があります。1つはロシアにとって対アメリカの防衛拠点のため、2つに北極海ルートが貿易の新しい道になる可能性があり、3つに日本にとって地理的メリットのない土地だからです。

そして日本の米軍基地について。アメリカにとって沖縄米軍基地がいかに完璧な拠点であるか、そもそも米軍が日本にとって抑止力以外のどんなメリットがあるのか、対馬列島や尖閣諸島の衝突の根底にある近海の争いなど解説されています。

アメリカ・ロシア・中国の戦略

孤立した大きな島だからこそ巨大なシーパワー国家になれたアメリカは、地政学的に恵まれており、他国から侵略されにくく戦力を国外に向けやすかったため世界の覇権を握ったとされています。ユーラシア大陸のリムランドにある戦略地域において、バランスを見ながら台頭する国が出てきたら積極的に介入しているのが、アメリカが世界の警察と呼ばれる所以ですね。

ロシアは海外に進出するルート、広大な領土を守るバッファゾーンなどに焦点をあてています。とくにクリミア併合は黒海ルートに影響力をもつために絶対におさえておきたく、NATO勢力とのバッファゾーンとしてウクライナも外せません。

中国は海洋進出を目論んでいるが、地政学的にはありえない戦略を立てています。点で拠点をとらずに、海に線を引いて面でアプローチする一帯一路構想です。

アジア・中東・ヨーロッパの地政学

東南アジアの小国は大国を天秤にかけて駆け引きをしながら立ち回っています。安全保障はアメリカに、経済は中国にといった具合です。

中国の裏で急成長しているインドは、石油ルートを巡り中国との対立があります。中国は海洋進出したいところで、両者にとってインド洋が重要な石油の確保ルートになるからです。

小さな都市国家でもシンガポールが発展できたのは、アジアのハブとして高いポテンシャルがあったこと。チョーク・ポイントであるマラッカ海峡に接して貿易拠点になることなど地政学的利点があったからです。奄美大島くらいの国土面積にもかかわらず、一人当たりのGDPは日本を上回っています。

中東は古くは貿易の中継地として、近代では石油の産出地として常に世界の要所となっています。かつてオスマン帝国の時代は平和だったのが、今では世界でもっとも混迷を極めるエリアに。

戦後植民地から独立し独裁者が乱立、ソ連崩壊後に独裁政権が倒され春のアラブが起き、宗派対立や部族紛争が多発して政府の力が及ばない空白が生まれISも誕生しました。さらにサイクス・ピコ協定が中東の分布を強引に分断したため、それぞれが国への帰属意識がありません。長らく他国が統治する傀儡国家だったので、独裁的な指導者でないと国を治めにくい体制になってしまっています。

ヨーロッパは大きな半島とも見れるので、大国同士のせめぎ合いの影響を受けます。東のロシア、南のイスラム諸国とせめぎ合いを続けてきました。小国の多いヨーロッパが対抗手段として経済協力のEU、軍事協力のNATOを発足。そしてイギリスが独自の外交戦略においてEU離脱した理由、戦後のドイツ経済が発展した経緯、なぜフランスでテロが多発するのかといったことが語られます。

書評

アメリカと中国の関係、沖縄基地や北方領土の問題、中国の一帯一路、イギリスのEU離脱、香港デモなど、世界情勢の「なぜ」がよく分かる一冊です。カラー図解が豊富で、タイトル通りサクッと読み進めるのにちょうど良いですね。

国際問題には宗教、民族問題、人種、歴史的対立などあって、地政学ではあくまでも地理を前提に、ビジュアライゼーションの概念で紐解いていきます。また、戦争における戦略概念には上位から順に世界観、政策、大戦略、軍事戦略、作戦、戦術、技術という階層があり、その中の上から3番目にあたる大戦略が地政学的観点です。

地政学に義理人情や好意など一切なく、国益第一の領土や権力争いで殺伐とした話になりがちです。こうしてみると世界平和なんて耳障りの良い言葉も、それぞれの世界観、国、人、民族、宗教によって、そもそもどのような状態が平和なのかが異なります。人びとが自分たちに都合の良い平和を求めるからこそ絶えず争いがおこり、平和を求めることこそまた争いの種になっているのが皮肉な哀しい話です。

関連書籍に「13歳からの地政学」も紹介しています。こちらは本書「ビジネス教養地政学」では取り上げられていないアフリカの経済事情にも言及されていました。ビジネス教養地政学は各国の軍事的な思惑や戦略による地政学の話がメインで、「13歳からの地政学」はより解釈の広い経済や地球の将来まで含めた物語形式になっています。

サクッとわかるビジネス教養地政学

¥1,300

ビジネス教養 地政学 サクッとわかるビジネス教養
奥山真司(監修)

国際情勢を読み解く必須知識「地政学」の定番書、20万部突破!

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【13歳からの地政学】地理と歴史と経済のポイントを線でつなぐ

ビジネス書グランプリ2023「リベラルアーツ部門賞」を受賞し、20万部以上売れている地政学関連で最も注目の入門書です。

おすすめされて読んでみましたが、13歳とは言わずに大人でも一読の価値ある良書でした。

田中孝幸

国際政治記者。大学時代にボスニア内戦を現地で研究。新聞記者として政治部、経済部、国際部、モスクワ特派員など20年以上のキャリアを積み、世界40カ国以上で政治経済から文化に至るまで取材した。

概要

アンティークショップの貿易商である「カイゾク」が、二人の少年と少女に7日間の講義形式で地政学を教える物語仕立ての入門書です。

それぞれの章を簡潔にまとめました。

物も情報も海を通る

貿易の9割は海を通って実現しています。もっと空輸も活用されているのかと思いきや、圧倒的にコスト面で海路が利用されています。

また海底ケーブルは情報をの要。さらに海の深さにも着目すると日本の海水体積は世界トップクラスであり、経済的にも優位な点があります。

地政学においてまずは『海』の重要性をおさえなければなりません。

日本のそばに潜む海底核ミサイル

海の話につながりますが、核ミサイルは3つの条件で最大効力を発揮します。

  • 原子力潜水艦
  • ミサイルの発射力
  • 潜水艦を隠せる海

これらの条件を揃えているのが現在はアメリカとロシア。そして中国が南シナ海を欲しがる理由が、この海底核ミサイルをおさえられるからです。

核ミサイルが外国への牽制力になるように、国の位置が外交を決めているのが地政学的見かたです。

大きな国の苦しい事情

主にユーラシア大陸のロシア、中国、ふたつの大国。どちらも陸続きで多くの国と接しているのが共通します。

隣接する国同士は関係性がデリケートになります。昔と今で地図を見比べてみると、国境の形が違うのは領土紛争があった証。

また、国内での少数民族による独立運動など、国外へ出ていこうとする遠心力と現行の国が引き留めようとする力の二つが常に動いています。こういった治安維持に大金を必要とするのも大陸国の特徴。管理が難しく領土を守るのに困難を伴います。

絶対に豊かにならない国々

なぜアフリカにお金がないのか。気候や食糧問題ばかり取り沙汰されるが、実は天然資源が豊富で、サハラ砂漠は大陸の1/3以下で緑や水も豊か。住みやすい土地も多い。

その理由は端的にいって政治家が海外に金を流してるからです。アフリカが大国の植民地支配の歴史にあり、ヨーロッパやアメリカがそのお金を吸い上げている。そんな構造は現代でも変わらず、アフリカの上層と外国がタッグを組んでいるのです。

この根本を解決しない限りアフリカはいつまで経っても貧しいまま。

このようなリーダーが多く軍事政権や独裁政権が多いのは、国境を定規で引いたヨーロッパの国々の支配にあったからです。各国の事情を知らずに分断された国境では、民族や部族間で遠心力が働き国としてまとまることはありません。それ故に手っ取り早くまとめるには強引なリーダーしかいないのです。

悪い歴史を継承しながら、先進国で誰もやりたがらない辛い仕事を押し付けるために、常にアフリカを弱らせている節もあるでしょう。

フェアトレードのチョコレートはカカオ農家と公正な取引で買っていることを示しますが、逆に言えばほかのチョコは押しなべてフェアな取引ではないことを意味します。カカオをアフリカで加工して輸出する方が絶対にいいのに、誰も技術や機械、お金、教育などアフリカのためにお金を使いません。

アフリカに貧しいままの悪循環を維持させており、さしずめ現代資本主義の奴隷制度のようなものと言えるでしょう。安くて良い物の危うさは、このように誰かの犠牲に成り立っていることがあります。安い理由には技術を高めて効率化して安くするか、人を安く雇って使う、この2パターンしかありえないのです。

地形で決まる運

アメリカは世界一恵まれた土地です。二つの大海に接し、赤道や北極から程よい距離にあり、気候が良く、農産物を作る土地、豊富な天然資源、豊かな自然、世界中から人が集まる多様な文化。恵まれた条件が重なり世界トップになれたともいえます。

逆に朝鮮半島は不運な地形にあります。大国に近く、周りに大きな自然による障害物がなく、豊かな資源・農産物・港や貴重なものがある土地。何度も外国の戦場になり、大国の支配下にあった歴史を辿ってきました。周りの国が欲しがるものがありつつ、攻められやすい地形だということです。

宇宙から見た地球儀

地球上でもっとも歪んでいる大陸は南極大陸です。大きな陸地に分厚い氷が乗っかった、アメリカやヨーロッパよりも大きな大陸。どの国の領土でもないが天然資源が多く、南極条約によって軍隊を置くことも禁じられています。

もっと視点を俯瞰して宇宙開発がすすむ現代。北極や南極など基本的に人が住めない土地や海を含めて、地球全体をみる機会が増えました。将来、宇宙空間を巡って縄張り争いが起きることだって考えられるかもしれません。

書評

ストーリー仕立てで地政学を学べるので、地政学の入門書に最適な本です。

私たちは学校の社会の授業で地理や歴史については学んできました。そして政治は公民という科目で勉強してきましたね。個人的には社会の授業は基本的に暗記が多くてあまり好きになれませんでした。

しかし地政学という観点を得ると、過去に学んだ地理や歴史のポイントが線となって繋がるところが生まれるのです。

国際政治に関するニュースを見ていても、地政学的な視点があるかどうかで捉え方も変わってくるでしょう。

タイトルには「13歳からの~」とありますが、本書は確実に大人が読んでも役立ち、楽しめる一冊だと思います。

13歳からの地政学

¥1,650

13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海
田中孝幸

読者が選ぶビジネス書グランプリ2023「リベラルアーツ部門賞」受賞!20万部突破の地政学入門書。

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【ペスト】コロナ渦を機に再注目された名作

コロナウィルスが流行ったことから、かつてヨーロッパで猛威をふるったペストを想起する人が多いようです。

驚異的なウィルスが蔓延る世の中で、人々がどのような様相を示すのか。歴史を顧みてわかることがあるかもしれません。

Albert Camus

フランスの小説家、劇作家、哲学者、随筆家、記者、評論家。1942年「異邦人」が絶賛され「ペスト」「カリギュラ」等で作家としての地位を固める。1957年ノーベル文学賞受賞。

あらすじ

194x年オランを舞台にペストを取り上げた記録物語。物語の語り手によってペストが蔓延したオランのできごとが記録され、合間に登場人物たちのストーリーが進行していきます。

オランはアルジェリアの主要な港町で商業の中心地です。当時の時代背景はフランスの植民地だったので、本土にお金を流すための経済のための町という感じ。

ロックダウンされて経済がストップすればつまらない町なので、登場人物たちは一層不安に駆られています。

主人公は医師のリウーと、彼の友人でありペストによる災禍で彼の仕事を手伝い続けたタルーの二人。

タルーはこの本の語り手によるペストに関する重要な記録とは別に、街や日常の些末なことをただ手帳に記録。この手帳からも語り手の補足として引き合いに出されます。

ペストによって町がロックダウンされるまでの記録を追い、それ以降はざっくりと紹介します。

  • 4月16日

    鼠の死体

    リウーは診療室から出るときに鼠の死体につまずく。普段こんなところに鼠が出現することなどあり得ない。さらに夕方にも瀕死の鼠を見かけた。

  • 4月17日

    門番の報告

    門番のミッシェル老人が、リウーに「鼠の死体を置いていくいたずらをしてくやつらがいる」と報告。この鼠の死体はリウーの診療所のみならず、すでに町中で噂になっていた。その日の午後には新聞記者のランベールがアラビア人の生活条件についての調査で取材に訪ねてきた。とくに衛生状態での話だったので、ここ数日の鼠の件について触れているのだろう。

  • 4月18日

    ペスト発生

    門番のミッシェル老人の顔色が悪い。さらに大量の鼠が診療所で見つかった。市の鼠害対策課によって、毎朝鼠の収集がされる。

  • 4月25日~28日

    大量発生した鼠

    鼠の死体は日ごとに増え、ピークで1日に8000匹以上が収集された。

  • 4月29日

    増加ストップ

    鼠の死体の増加はぱったりとやんでいった。門番のミッシェル老人がうなだれて、パヌルー神父に支えられていた。首や鼠径部に疼痛、腫物もあり、ひどく苦しんでいた。

  • 4月30日

    そしてロックダウンへ

    翌日、門番のミッシェルの死を皮切りに、町中で熱病におかされて死亡する例が増加。リウーは同業の医師と話してこれがペストだと認めざるを得なかった。リウーと友人のタルーはペストの対応措置をしてまわるが、患者の増加に追い付かない。行政の対応も緩慢で常に後手になっていた。

ロックダウン

患者は増え続けベッドの収容数が足りず、ついにリウーは知事に電話をかけ市が閉鎖されます。

町に入っていくことはまだしも、街から出ることは一切許されません。電話も郵便も規制されました。最初はせいぜい一時的なものだろうと世間は思っていたが、食料は高騰し、病に効くと噂のハッカ飴がよく売れ、映画館は同じフィルムをひたすら流して、尋常では考えられない街の様相になっていきます。

タルーはリウーなどの医師だけでは限界があることから保険隊を組織しました。グランは公務員として働きながら保険隊の幹事として熱心に取り組み、さらに自分の仕事として作家業もしています。彼は目立たないが堅実で真面目でリウーからの信頼も厚い。

一方で元犯罪者のコタールはペスト騒動にまぎれて逮捕されることが有耶無耶になり、この状況を歓迎していました。

同じロックダウン状況下でも、人それぞれの営みと向き合い方が映し出されています。

不条理

食料補給はより厳しくなり、貧しい家庭は極めて困窮、富裕な家庭はほとんど不自由しない格差が広がりました。

ペストは公平に猛威をふるうが、市民のエゴイズムによって人々の心には不公平の感情が先鋭化されていきます。もし唯一の平等があるとすれば、それは人はみんな死ぬということ。

こうしてペスト下における不条理な世界をあらゆる立場の人物を通して描いていくのでした。

書評

語り手は終盤まで正体を伏せられていますが、この語り手の記録によって人々が不条理に向き合う様相、語り手自身が不条理に見舞われる始末を見届けることになります。

この記録的な文章がいかにも客観的かつ無感動に徹しているようですが、その簡潔な文章の影にわずかな感情や気持ちが息づいてるのが不思議な読み心地でした。想像や感情に訴えるよりも、主として頭脳に訴えるような作品です。逆にその特徴的な文章が、小説にしては硬く読み難い気もします。

登場人物は多いけど、それぞれの立場が明確になっているので、人物の輪郭がくっきりとして群像劇の中ではかなり読み進めやすいものだと思います。

ペストによるこの不条理な世界を後世に残すための学術的記録のような重みもありながら、不条理に対する抵抗や受容のしかたが個人的な事象として捉えられる日記ともいえるでしょうか。文学的修練に培われたカミュの文体の魅力ですね。

ランベールの成長

個人的には新聞記者のランベールが次第に心変わりしていく様子が好きでした。

町からの逃走便宜をリウーに断られてからいろいろと奔走したが、合法的には抜け出せないことを悟って、密輸業者を介して衛兵を買収して脱出を試みるも失敗。最終的に彼も保険隊に志願し、自分一人の幸福よりも全体の幸福を願う人間に成長していきました。

町の惨状を目の当たりにして関わった以上、自分はもう町とは無関係の人間ではないこと。そんな気持ちを無視してパリに帰れば、待っている彼女に顔向けできなくなるだろうと想像するんですね。

最初は器の小さい嫌味な人間だと思っていたけど、いざ自分が同じ立場になってみたら、やっぱり自分も我先にと町から出ようとするかもしれないです。だからこそ彼の人間味にはリアリティがあって、その成長ぶりに希望を感じられるんですよね。

リウーとタルー

私が最も好きな登場人物はなんといってもタルーでした。

リウーとタルーの友情、知的な会話、タルーが身の上話を打ち明けて友情記念に二人で海に泳ぎに行く場面。いい大人が青春しているようで、この二人の醸し出す空気間には不思議な魅力があります。

「ペストが収束して平常の生活に戻るってどういうことか」と聞かれると、タルーは「新しいフィルムが来ることですよ、映画館に」と笑いながら言いました。このときの哀愁とユーモアは、本当に彼独特の味わいだと思います。

そして言ってしまうとタルーは最後にはペストに罹ってしまうのですが、ここでもやはりカミュの文体はとてもドライで、静かな感動を呼び起こされるようでした。

不条理文学

作者のカミュは不条理哲学を打ち出した人で、戦争・災害・全体主義といった極限状態への抵抗を描いてきました。

本作のペストはナチスドイツに対する暗喩ともされています。原作の1947年は第2次世界大戦が終わって間もないので、多くのヨーロッパ人はこの本を自分事のように理解していました。

ダニエル・デフォーのエピグラフに表れています。

「ある種の監禁状態を他のある種のそれによって表現することは、何であれ実際に存在するあるものを、存在しないあるものによって表現することと同じくらいに、理にかなったことである。」

ダニエルデフォー

つまり戦時中にナチスドイツへのレジスタンスに参加したカミュの体験が、ペストという別の形をとってフィクション作品として再現されています。

もっと広義的には、この世の悪、不条理などすべてに対する私たちの姿勢そのものと言えるでしょうか。人間が不条理とどう向き合って生きてくのかを示してくれる群像劇でした。

ペスト

¥935

ペスト
カミュ
宮崎嶺雄(訳)

発表されるや爆発的な熱狂をもって迎えられた、『異邦人』に続くカミュの小説第二作。

【参考図書】ペスト大流行

黒死病とよばれたペストの大流行によって、ヨーロッパでは3千万近くの人々が死に、中世封建社会は根底からゆり動かされることになった。記録に残された古代以来のペスト禍をたどり、ペスト流行のおそるべき実態、人心の動揺とそれが生み出すパニック、また病因をめぐる神学上・医学上の論争を克明に描く。

村上陽一郎

東京大学名誉教授

古代世界のペスト、最初のペスト文学から始まり、その歴史をたどっていきヨーロッパ社会を脅かしたペストの驚異を浮き彫りにしていく本です。

  • ペストは保菌者であるノミの咬傷からペスト菌が血液中に注入されて発病
  • ネズミをはじめとした齧歯類も共通して宿主となり、とくにクマネズミが媒介
  • 「腺ペスト」は40度前後の熱発、麻痺や硬直、精神の倦怠感や錯乱、そして局所的な淋巴腺の腫脹、紫斑や膿胞が黒いことから黒死病という
  • 「肺ペスト」は淋巴腺の腫脹は見られないが、肺炎症状で心機能が低下して突然死を誘うこともある
  • 死亡率は時期や社会的状況をすべてひっくるめて平均30~40%
  • 現代でも地球上にペストはあるが、有効な抗生物質により歴史的な大流行はもうなさそう
  • ペストに限らず流行病の多くは神の意思、あるいは神託として解釈された歴史がある。神学的立場と医学的立場からの対立が見られる所以

また、バッタの大量発生が間接的にペストの流行に関連しているなど、興味深い話やデータなどもありました。

こういった小説との関連本もあわせて読んでみると、より作品の深みを味わえるような気がします。

ペスト大流行

¥836

ペスト大流行 ヨーロッパ中世の崩壊
村上陽一郎

かつてペストの大流行は三千万の人命を奪った。医学から神学まで、社会を揺るがす大パニックの実態。

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【変身】朝起きたら毒虫になっていた悲しい男の話

カフカの代表作となる中編小説。カミュの「ペスト」同様に実存主義文学かつ不条理文学といえます。

朝、目を覚ますと俺は虫になっていたという始まりは衝撃的です。

Franz Kafka

ユダヤ人の商家としてプラハで生まれ、法学を修めた後、役人として勤めながら執筆活動。人間存在の不条理を主題とするシュルレアリスム風の作品群を残した実存主義文学の先駆者。

あらすじ

ある朝、グレーゴルが目をさますと自分が巨大な毒虫になっていました。鎧のような堅い背、褐色の腹、たくさんの足、ねばねばした分泌液。

まだ夢の中ではと思ってもうひと眠りしようとしても、慣れない虫の体のせいでうまく眠りにつけません。

こんな異常事態でありながらグレーゴルが考えていたことは、外交販売員としての仕事の苦労のことでした。すでに汽車に乗る時間を逃してしまい、仕事に遅刻することが確定しています。

時間に心配した母と父が起こしに来るがうまく返事ができません。相手の言語は解るが、こちらから発声して伝えることができないのです。

グレーゴルは日ごろの習慣により、部屋の戸締まりはきちんとしていたので、家族が様子を見に来てもとりあえず部屋にこもってやりすごしていました。

虫になった体でどうにかベッドから起き上がり、仕事に向かう支度をしなければ。

ついに職場の支配人が訪ねてきたので「体調が悪い」と適当な問答をして場をしのごうとするが、ついに両親と支配人たちが鍵屋を呼んでこじあけようとします。

なんとか自力で扉をあけて姿を表すと、母は絶句、父は臨戦態勢、支配人は恐怖のあまり逃げ出してしまいます。支配人に状況を取り繕ってもらうために、グレーゴルは追いすがろうとするが、その恰好が襲おうとしているかのように勘違いされました。父が棒でグレーゴルを追い立て、虫の姿で自室に引きかえすしかありませんでした。

今後もこのような誤解が生じ得るので、うかつに行動できません。そうしてグレーゴルの自室でのひきこもり生活が続きます。

グレーゴルは虫であることに順応し、家での居場所を失い、人に傷つけられていき…最後にグレーゴルがとった選択とは――。

書評

まずとにかくシュールな設定が目を引きます。ベッドから起き上がるだけでも相当な時間がかかり、そんな状況にグレーゴルは自分でもおかしくなって笑っちゃいます。

そして虫になったまま、仕事に行かねばと焦っている点。どうしてこの状況を素直に受け入れているのか、もっと気にすることがあるだろうにと思って仕方ないですね。

この本を読み解いていくと、虫になったこと、それ自体には意味を持たせていません。だから最後まで虫になった理由も何も説明がなく、その状況が当たり前かのように淡々と進行していきます。

そして個人的にはグレーゴルの健気な性格に少し心を痛めます。こんな不条理に見舞われても、仕事のこと、家族のこと、そしてお金のことなど、彼は常に他者のためを想っていました。両親の借金を肩代わりしながら、やりたくない仕事を続け、広い家に住まわせている孝行ぶり。妹の音楽大学のための学資まで工面していました。

それが虫になってしまったばかりに、家族に気を使って怯えながら生活し、人間としての尊厳は急速に失われていく。逆に虫として扱われることに慣れていき、自尊心なんてあったもんじゃないでしょう。

彼の世話役を買っていた妹の心情も複雑です。慕っていた兄が突如虫になり、家族の中で自分しか世話をしない。最初はそんな微妙な気持ちで世話をしていたのが、次第にグレーゴルを虫を飼っているかのような対象として捉えだす。そんな妹の狂気のようなものが見え隠れします。

虫の姿について

このグレーゴルが『なんの虫』になったか、これはあらゆる議論がありますが、基本的には特定の虫を想定していないようです。作中でもグレーゴルは極力他人に自分の姿を見せないようにしているので、客観的な彼の姿を表している描写はありません。

グレーゴル自身の動きからさっするにムカデか、ゴキブリか、コガネムシなどいくつかの憶測はありますが、具体的な言及はされていません。確かなのは硬い外殻があること、毒があること、粘液を分泌することなどですね。

作者のカフカ自身、作品としても虫の姿を見せて読者にイメージを固定化させるのは避けたかったようです。その根拠に彼は、扉絵や挿絵に絶対に虫の姿を描かないよう要求していました。

一説によると虫の姿を固定化させない理由に、読者に想像を拡大できるようにしてるのではと思われます。

例えば、もし変身していない前提で状況だけを整理すると、グレーゴルは家族を養いながらしたくもない仕事を続ける重圧からノイローゼになった、とも捉えられます。虫になったか否かだけを取り除けば現実にあり得る話で、まるでグレーゴルにふりかかった事故のように思えます。なぜ虫になったのかといった問いは一切なく、誰も気にせず、それこそふいに日常を襲う不条理性を描いているようです。

それでも生きていかなければならない、ここに本作の実存主義的な意図が見えます。

実存主義と不条理

虫になったことが事故だと前述しましたが、これもまた現実に置き換えられます。

例えば不慮の火災で顔を火傷して醜い姿になったとする。この容姿に対する不条理な事故という点において、虫になろうが、顔を火傷しようが、その原因や本質を追求しても仕方ない。事実は事実とただ受け入れて今を生きるしかありません。

これが実存主義。

実存は存在そのもの、本質はその存在が作り上げる目的や意義だが、起きた事故に目的や意義なんてありません。

これらの解釈を広げていくと、人間というのは本質をもたずにこの世に産み落とされるものだと思えます。本は知識を与えるために書かれるし、時計は正しい時間を刻むために生産されます。人間もなにか運命や使命に定められていると思われるでしょうか。しかし人間は自分の未来を選択する能力があります。

「何のために生まれてきたのか分からない」なんて悩みは多いですが、本質を伴わないまま右往左往しながら生きていくから、誰もが常に不安をかかえているのです。逆に言えば何にも縛られない自由であるということ。

人生において常につきまとう不安から逃れるために目的や意味を求めるのではなく、自身の自由な意志と選択をもってして主体的に生きるのです。

当然その自由には責任も伴うが、だから生きるのは楽しい。そう哲学者のサルトルは言っています。

この実存主義的な思想で、不条理に抵抗していくさまを文学に落とし込んだのがカフカの変身です。

変身

¥539

変身
フランツ・カフカ
高橋義孝 (訳)

事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。海外文学最高傑作のひとつ。

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【スターティングストレングス】ウェイトトレーニングの本として最高のベストセラー邦訳版

ウェイトトレーニングに関する書籍として出版業界市場最大のベストセラーとなった本書を、4年かけて古い内容や不完全なものを更新した第3版。

Mark Rippetoe

世界でもっとも有名なストレングスコーチの一人。10年間パワーリフティング選手として活動し、パワーリフター、アスリート、さらに何千もの筋力や競技力向上に興味を持つ人たちを指導してきた。八百健吾(監訳)

概要

本書は5種目の主なバーベル種目に対象を限定し、それぞれを何十ページにわたって詳細に説明しています。バーベル種目は多くの筋群の動員、可動域、高重量を持ち上げるポテンシャルが高い運動です。一般的な多種目エクササイズより効率的な内容に絞り込んでいます。

やり方だけでなく、バイオメカニクスや解剖学の観点からの「なぜそのやり方か」までの解説を含んでいるので説得力が違います。

鍛える理由

運動がパフォーマンスにどういった効果があるかを考えるよりも、身体は運動という刺激があることで本来の状態に戻ることができるのが本書のスタンス。

なんらかの問題が起きたときにそれを正すために運動をするのではなく、問題がなくてもやらなくてはいけないもの。運動をしなければ必ず問題が生じます。

好むと好まざると関わらず、体力は生きていく上で最も重要なものです。

なぜバーベルか?

そもそもマシンの始まりはアーサー・ジョーンズが、ノーチラスを開発したところから。当初、身体をハードに鍛えるにはバーベルの扱いを覚えるしかなかったため、革命的でビジネス的にも大成功しました。ジムにとってもスタッフ教育のコストが大幅に削減されます。

しかしマシンサーキットはとても効率が悪く、ある人がバーベルに切り替えてから1週間で、12台のマシンで鍛えた何ケ月もの期間全体で増えた体重以上の増加もあったという話もあるほどです。

人体は全体がひとつのシステムとして機能するものであり、マシンによって部位ごとに分割して鍛えるのは道理にかなっていません。なぜならマシントレーニングで得られた筋肉を、日常動作で同様の使い方をすることがないからです。筋力を鍛える動作パターンは、通常時の動作パターンと同じでないとなりません。

バーベルによって多関節の可動域全体で正しく行うと、人体の骨格や筋肉の構造が荷重下でどう働くかが表れます。つまり身体のデザインに沿った自然なかたちでウェイトを動かすことで、最適な形で効果が出ます。

さらにバーベルは経済的に取り入れやすいというメリットもあります。

しかし唯一の問題は、圧倒的大多数の人が正しいやり方を知らないということ。

プログラム作り

人間の成長には適応の根幹があり、適応力を越えたストレスを突破することで初めて次の段階に成長できます。

トレーニングにおいても、挙上重量は行う頻度に対して適応するものではなく、バーベルを挙げることからくるストレスに対して適応します。重量、レップ数、挙上速度、セット間休憩などのあらゆる変則要素がある中で。

また、ストレスは回復できるものに調整しなければならず、段階的にストレスを与えて適応を蓄積させる手順を踏んでいかねばなりません。

個人の遺伝的限界のグラフによると24ケ月までの初心者の成長はすさまじく、トレーニングもシンプルなもので十分。そこから48ケ月までの中級者、それ以降の上級者となるとトレーニングはより複雑になり筋力パフォーマンスの伸びもゆるやかになります。

レベル別トレーニングの考え方

初心者が最も高い効果を求めるなら「負荷となる要素を毎回少しずつ高め、その負荷の高まりに対して適応が起こる限り続ける」

中級者は回復が間に合わなくなり、その回復を念頭においたプログラムを取り入れる段階にあり、最大筋力を発揮するトレーニングを頻繁に取り入れることでより速く成長できます。

上級者になると遺伝的限界に近いところでトレーニングを行うので、オーバートレーニングにならないように注意して強度とボリュームを調整する必要があります。

プログラムの組み方

ウォームアップセットを4段階1~2セットで、最初はシャフトのみから始めます。最後のウォームアップはメインセットの85%~90%程度を1~2レップ1セットで十分。

メインセットは5レップ3セット程度で繰り返し伸ばしていくイメージ。

※1RMと20RMではその適応が全く異なることを理解した上で、1セット5レップの5RMが初心者の効果の高い妥協点になる。

重量の増やし幅はメインセットの重量を伸ばすのを基準、正しいフォームで週3回トレーニングを行う男性を前提に、最初の2~3週は5㎏ずつ、そのあと数か月は2.5㎏ずつ伸びると順調です。

栄養と体重

十分な運動ストレスに加えて回復を促す食生活が結果を生み出します。この人為的な急成長は高齢になるほど縮小していってしまうので若い時ほど成長の見込みがあります。

運動して、食べて、休むのが最大限の前提。

若い細身の人がちゃんと食べながら正しいバーベルトレーニングを実践すると、2週間で5~7.5kg増量もあり得るでしょう。

「ちゃんと食べる」とは、1日4食、肉と卵をたんぱく源とし、野菜と果物をたくさん摂り、牛乳をたくさん飲むこと。全体の食事量は3500kcal~6000kcalで、体重1㎏あたり2g以上のたんぱく質を摂取します。

手っ取り早い増量法は牛乳を1日1ガロン(3.78リットル)飲むこと。手に入りやすく、調理不要で、急成長する哺乳類にとって必要な要素が揃っているから。

書評

Youtubeで筋トレに関する情報を非常に理論的に解説するかたがいます。そのかたが参考にしていたのが本書(英語原版)だったので、日本語版もあるのならと買ってみました。

まずこの本の専門性の高さから値段が高い…。5,800円(税抜)なので、大学の参考書としても使われるレベルですね。そのぶん内容が充実していて、バーベル種目の正しい知識を入れるならこの本一択だと思います。

筋トレ本は数多くありますが、1つの種目を見開き1ページ程度の浅い内容ですませる本が多いこと。サイドレイズやレッグエクステンションのような、単関節運動なら簡単に理解できるかもしれませんが、スクワットやデッドリフトのように複雑な多関節運動で且つフリーウェイトについては、見開き1ページ程度の短い説明では適切なやり方は身につきません。むしろ怪我などのリスクにもつながります。

バーベル5種目に加えて、有効な補助種目というのも記載されていますが、基本的にはバーベルメインの解説本となっています。

全体的に専門性の高さと、一つの内容に対する深さからトレーナー向けの本だと感じます。ある程度トレーニングの知識と経験がある人が、さらに深い理解を得るのにも最適です。

現在はYoutubeなど分かりやすい動画教材が世の中にいくらでもあるので、初心者はそういったものから実践して段階的に知識を磨いていくのがよさそうです。

原本が海外なので、例えば栄養に関する内容が3500~6000kcalなどとてつもないカロリーになってましたね。日本と欧米で基準が異なる点もあるので、その点も踏まえて読み進めていいく必要がありそうです。

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【孤独の愉しみ方】自然と孤独から多くの人生の原則を見出したソローの叡智

コロナ渦において「孤独」や「おひとり様」という言葉がメディアでもち上げられた時がありました。物理的に他者と距離をおくので、必然的に一人で過ごす機会が増えます。

日本では昔から「和」や「協調」など集団的な取り組みや形成に美徳を感じるところがあり、孤独という言葉が少々ネガティブに捉えられがちだと思います。それが皮肉にもコロナによって、孤独や1人での活動を肯定的に捉えていく機運が一気に高まったようです。

図書館に行ったとき、そんな世間のあおりを受けて孤独やおひとり様ライフの特集エリアが設置されていました。その時に手に取った一冊が非常に良かったのでご紹介します。

ヘンリー・デヴィッド・ソロー

インドの独立運動やアメリカの公民権運動などに影響を与えた作家。ウォールデン湖畔の森で2年間の自給自足生活を送った記録「ウォールデン森の生活」が大きく評価されている。

概要

本書は「孤独」をテーマにした5章立ての名言集となっており、名言に続いて解説や出典となる本の文脈が記載されているアンソロジー形式です。

  1. 孤独が一番の贅沢
  2. 簡素に生きる大切さ
  3. 心を豊かにする働き方
  4. 持たない喜び
  5. 自然の教え

孤独を愉しむ方法、人間らしく生きる方法、シンプルに暮らす大切さについて、150年前、アメリカの森の中の湖の畔で、小屋を建てて自給自足の生活をしながら遺した思索家の言葉を、わかりやすくいまに生きる人に向けて編集しました。

ガンジー、キング牧師を動かし、環境保護運動のバイブルともなり、世界を変革した言葉は「森の生活者」の孤独な時間から生まれました。心豊かに生きる秘訣がこの本には書かれています。

イースト・プレス 内容紹介

本書の中から個人的に特に気に入ってる内容を抜粋して紹介します。

「みんな」という言葉にまどわされてはならない。「みんな」はどこにも存在しないし、「みんな」は決して何もしてくれない。

多数による同調圧力をもってして相手を丸め込んだり、「みんな」という主語の大きい曖昧な対象に責任をおしつけたり、そうやって本来の自分を喪っていってはいけません。

退屈するのはその中に野生がないからだ。

文学の中で人の心を惹きつけるのは野性的なものだけである。つまらなさとは飼いならされていることの別名だ。

『ハムレット』には洗練されていない自由奔放な思考があって、言葉にできない美しさを含んでいます。 動物に例えるとわかりやすく、同じ動物でも飼いならされた動物園で眺めるのと、自然豊かな山の中で発見するのでは感動が大きく異なります。

生活費を稼ぐために、起きている時間のほとんどを労働に費やすのは、明らかに失敗だ。

ほとんどの人のように午前も午後も自分の時間を社会に売り渡してしまったら、人生は生きる価値のないものになってしまいます。目先の利益のために生得権を売り渡さないことがソローの信条。

人間は自分がつくった道具の道具になってしまった。

道具や手段が進歩しても達成したい目的は今も昔もずっと変わらないものが多々あるでしょう。

近代的な発展を肯定するばかりでは別の何かを失ってしまうかもしれません。

僕たちが住むこの地球も、宇宙の中ではほんの小さな点にすぎない。

ソローは他人からよく「森で暮らすのは寂しいだろう」といわれていました。

しかし視座をあげれば、この地球だって広大な宇宙から見ればほんの小さな点にすぎない寂しいものです。

書評

名言集なのでパラパラと気軽に読んでいけるし、気に入った部分には付箋をつけて何度も繰り返し読んでいます。

心の賛沢は、一人の時間から

孤独には、力がある。

イースト・プレス(コピーライト)

孤独が決して悪いものではないことや、むしろ人間が本質的に豊かな精神性を育むためには孤独が必要であることが分かります。

自分が一人であることに寂しさを感じているのであれば、それは孤独を味方にして自分を成長させるチャンスでもあるのです。

ちなみにこの本の装丁のつくりがよくて、内容も何度も読み返したくなるような本だったので、図書館で返却した後に自分で購入しました。さらにkindle版も購入したくらいお気に入りの一冊です。

孤独の愉しみ方

¥1,430

孤独の愉しみ方 森の生活者ソローの叡智
ヘンリー・ディヴィッド・ソロー
服部千佳子(訳)

孤独を愉しむ方法、人間らしく生きる方法、シンプルに暮らす大切さについて、150年前、アメリカの森の中の湖の畔で、小屋を建てて自給自足の生活をしながら遺した思索家の言葉を、わかりやすくいまに生きる人に向けて編集しました。

ソロー「森の生活」を漫画で読む

シンプルな生き方を提唱した名著の誉れ高い『森の生活』

実際に読むと長大で難解なこの作品を、選び抜いたソローの文章とジョン・ポーサリーノによるシンプルな描線で漫画にしたのが本書。

後半には引用されたソローの文章を訳出し、その言葉がどんな文脈で書かれたのかを解説しています。

ソローってどんな人?森の生活とは?という人にはこちらの漫画の内容が易しいのでおすすめです。

この世界で生きることは苦行ではなく、遊びなのだ。シンプルに賢く生きてさえいれば。

ソロー

ソローの遍歴

ハーバード大学卒業からパブリックスクール辞職の理由、執筆業で生計を立てる動機、森での生活、政府への意思表明、森での生活実験終了後の講演活動までの遍歴が記されています。

ソローの1845年3月~1847年9月までの日記は、アメリカ文学を代表する「森の生活」として出版され、これに触発されて多くの国立公園が生まれ、生態系保存活動が促されました。

また、エッセイ「市民としての反抗」こちらも20世紀のイギリス統治に対するインドの独立運動や、アメリカの公民権運動などに影響を与えています。

ウォルデン湖での生活

四季を感じ、動物の足跡を追い、ハンノキやブドウなど自生する植物、ウォルデン湖の情景を眺める生活。2エーカー半の土地にインゲン豆、ジャガイモ、トウモロコシ、エンドウ豆、カブなどを植えていました。

農作業して、1~2時間休息して、昼食をとり、泉のそばで本を読む。

そうやって自然と一体になっていく中で気がついたのは、すべては神秘的で果てしなく、自然を味わい尽くすことはできないということ。

人は容易いルートばかり歩くから、何度も行き来するうちに踏みならされ、伝統や文化という轍が刻まれます。だから森へ行くのはそんな流れへの逆行ともいえるのでしょう。

書評

漫画とありますが、実際にはイラストをぽつぽつと単純なコマでつなぎ合わたような、シンプルな線の絵本調の本です。思考をセリフ化して、コマとアンニュイな無言の表情だけで文脈を補完させる特徴的な漫画です。それがソローらしさを引き出してるようで、シンプルな構図だけどじっくりと時間をかけて読んでしまいました。

内容としてはソローを何も知らない人からすると、なんとも虚無的な無感動なストーリーに思えるかもしれません。しかしそれが現実ですし、そこに本来の生きる本質を見出す価値があります。

ソローは隠者ではなく、森の生活でも多くの客人を招き入れていましたし、自分が村に足を運ぶことも度々ありました。彼の見立てでは、子供や女性は森の中が好きでしたが、商売人や農夫に限って仕事と孤独の話ばかり気にしてくるそうです。社会生活の中で人々の大事な感性が失われていくことを嘆いているようですね。

後半には抜粋解説文もあるので、漫画で抽象的に表現してる部分はそちらで追って理解するといいでしょう。ジョン・ポーサリーノが、いかに言葉少なに「森の生活」を捉え、ウォルデン湖の静寂やソローの静謐な思考を再現しているかが分かってくると思います。

ソロー「森の生活」を漫画で読む

¥1,760

シンプルに暮らそう!ソロー『森の生活』を漫画で読む
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー
ジョン・ポーサリーノ(絵/ 編集),
金原瑞人(訳)

人生の針路に迷ったとき、この本を開いてみてください。シンプルな絵の中に珠玉の言葉が散りばめられています。