時をかけるゆとり|朝井リョウ
bunsosha-novels1940
文装舎
クラッシィという雑誌に2年間にわたり掲載したエッセイ24編に、書下ろしの表題作を加えて書籍化したものです。

村上春樹(著)
安西水丸(絵)
新潮社
1990年10月29日
など。
本書から個人的に気に入ったエッセイを一つ紹介します。
タクシー料金を払う際に万札しかなく小銭がないときどうするか。禁煙しているのでタバコを買うわけにもいかず、そんなときは決まって化粧品店でシェービング・クリームを買ってお金を崩すそうです。
それを持ったまま街を歩いていると、街がいつもとは違ったように見える。拳銃をポケットにつっこんで街を歩くかのように。いつもと違う状況が、いつもと違う景色を映し出して、それがなんだかシュールに思えるのです。
外国に行くと必ずその土地のスーパーでシェービングクリームを買います。国ごとに特色があるのか、シェービングクリームによって外国に来た実感を得られるようです。お気に入りはジレットの「トロピカル・ココナッツ」で、これを使うと一歩外はすぐにワイキキ・ビーチという気分になれます。
村上春樹のエッセイを読んだのは本作が初めてでした。
小説を読んでいると、クールでニヒルな人物が多いように思います。だから作者自身もそうなのかと勝手にイメージを重ねようとしてしまいますが、エッセイを読んでいると意外とユーモアのある人なんですね。
文章も小説とはまた違った味で、それでいて「あ、やっぱり村上春樹だな」と思える独特の文体。
そして安西水丸のイラストがかわいらしい。カラフルな色づかいだけど、ちかちかしていないマットな質感の色味、ポップさと落ち着きを両立したような素敵な絵でした。