蛇を踏む|川上弘美
bunsosha-novels1940
文装舎
巻末の解説に続く翻訳者の「翻訳ノート」を先に読むことをおすすめします。当時のキューバーとアメリカの野球事情と、老人が出航する海の知識について補足されています。
いくつもの出版社から同タイトルが出ていますが、本記事で紹介する新潮社の新訳版が一番カバーデザインがかっこいいです。

Ernest Hemingway(著)
高見浩(訳)
新潮社
2020年6月24日
老人サンチアゴはかつて優秀な漁師だったが、現在は年老いてずっと不漁続きとなっていました。今回が最後の漁になる覚悟で出港して、長年の習慣から手堅く仕掛けを準備して獲物がかかるのを待ち続けます。
ついに鉤に巨大なカジキがかかり、老体一人で3日間の孤独な奮闘が繰り広げられていきます。孤独な老人の精神の支えになっていたのが、彼を慕ってくれていた少年マノーリンの存在でした。
しかし老人にはその後さらなる試練が待ち受けているのでした。
老人は今回の漁以前は三か月近く不漁だったので、周囲からはもう落ち目だとされていました。そんな状況で、老人が漁師としてのプライドを携えて、慕ってくれる少年のために最期にひと花咲かせる話。
状況自体は船上で水中のカジキとひたすら膠着状態、場面転換がなく老人のモノローグが続くので、少々退屈で読みつかれる気もします。
また、老人は決して嘆いたり、状況を悲観したりはしません。サンチアゴの海に対する敬愛が彼を支えてくれたいたのでしょう。
読み手の感動を誘うような湿っぽい感じではなく、静かに感動させるドライな読みごたえでした。これがいわゆるハードボイルド小説といわれる感覚なのかもしれません。