小説/文学

西の魔女が死んだ|梨木香歩

bunsosha-novels1940

この本を読もうと思ったきっかけは、当時はまっていたポッドキャストによる影響でした。

身近な雑草を日常に生かすをテーマにしたポッドキャスト番組【道草を食む】にて、おすすめの本として紹介された一冊です。

The Witch of the West Is Dead

西の魔女が死んだ

著者

梨木香歩

出版

新潮社

刊行日

2001年8月1日

まいとおばあちゃんのつくったジャムは、黒にも近い、深い深い、透き通った赤だった。嘗めると甘酸っぱい、裏の林の草木の味がした。

48p

あらすじ

中学校にあがったばかりのまいは「あそこは私に苦痛を与える場でしかないの」といって登校拒否。しばらく田舎のおばあちゃんの家、通称「西の魔女」のもとへ行きます。

畑から野菜をとってきたり、鶏小屋の卵で朝食を食べたり、田舎の新鮮な空気と大好きなおばあちゃんのもとで豊かな暮らしが始まりました。

しかしまいの心をかき乱す近所の傲慢な男が現れ、鶏を犬に殺される事件も発生。不穏な気持ちを静めて、外からの刺激に動揺しないための魔女修行が始まるのでした。

感想

にんにくをバラの間に植えておくと、バラに虫がつきにくくなるし香りもよくなる。クサノオウは猛毒だけど、眼病に効く薬にもなる。こんな植物豆知識が読んでいて楽しい、緑豊かでどこかほっとさせる物語です。

まいの母の発言「昔から扱いにくい子だった、生きていきにくいタイプの子よね」まいはそれをいつまでも覚えています。

嫌なこと一つあると、その日のすべて何もかもが台無しにされたような気分。それこそ読む人の感受性によって、どれだけまいに同情できるかが変わってきます。私もそういった経験や感情はこれまでに幾度となく向き合ってきました。

上手な人付き合い、負担にならない感じ取り方。そんな人間の心の難しさを、まいの繊細な感受性を通して読者に伝えているようでした。

Q
ネタバレ考察

実はゲンジさん(近所の粗野な男)は本当に嫌な人だったのか、という疑いが私の考察する彼の人間像です。雨が続いたあとの日にスコップでタケノコを掘っていたのは嘘で、まいの死んだおじいさんのために銀龍草を探していたのではなかろうか。ゲンジさんの豪胆で遠慮のない接し方は、彼なりの歩み寄りだったのではなかろうか。

まいとは対照的な図太くて大胆な近所の男が、この小説の良さを引き立ててくれます。

collected works

梨木果歩 作品集

文庫本収録の「渡りの一日」は、まいが同級生と一日を過ごす後日談。魔女修行で成長したまいの姿が立派に描かれています。

また、梨木果歩作品集に、ブラッキーの話(まいの母と愛犬ブラッキー)、大人になったまいが祖母を追憶する話、まいが去ったあとのおばあちゃんなどスピンオフ作品もあります。

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谷口ゆーい
谷口ゆーい
文装舎|編集長
読書ブログやコラムを書いています。積読はしない派ですが、なかなか0冊になりません。本棚には心から気に入った本と、装丁が素晴らしい本を残しています。装丁が好きで自分でも製本をするようになりました。
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