724の世界|吉本ばなな
私の知人が一般家屋の解体現場から、その家の居住者だったであろう人物の日記を持ち出してきたことがありました。10年以上前のことなので、それが違法な行為だったのかどうかはおいておきます。
昭和初期生まれのおばあちゃんと思われ、日々の些細なことから感情を剥き出しにした本音などが書き綴られていました。本来他人に読まれることを想定していないので、そこに書かれた言葉は真実味があり、秘匿性があり、最も生々しい文章です。
他人の日記をのぞき見るなんて趣味が悪いなと思われるかもしれませんが、エッセイという形で出版された本ならば、疑似的にもそんな背徳感を得られるかもしません。いや、やはり出版が前提である以上、そういう意味での真実の文章ではないですね。
724の世界

吉本ばなな
DR BY VALUE BOOKS PUBLISHING
2024年5月24日
還暦直前、コロナ明け、まだ子どもが家にいる日々の、人生の宝みたいな記録になった。 行ったお店、ちらっと出てくる考え。どれも読んだ人にひそかに役立つと信じていますし、願っています。
吉本ばななの日記です
作家 吉本ばななによる2023年の1年間の日記です。
親しい人々との再会、20歳になった子供との思い出、体調が芳しくない肉屋の主人、アブダビで触れたアラビア文化など。
生活感ある日常から大御所作家としての活動まで、一人の人間の1年間をダイジェストで読んでいく感覚になりました。
日記を書き始めた
この本を読んだのが2025年の2月でして、12月から私も日記を書き始めました。どうしても2026年1月という節目でスタートしたい性格でして、12月から始めたのは習慣を定着させるための準備です。

現在2026年1月中旬に追記していますが日記は続いています。
手帳に記入する予定やタスクとの大きな違いは、日記には感情がのってくることでしょうか。事実だけでなく、感情も残しておくとその場の状況や記憶に残りやすくなります。
本書はジャンルでいえばエッセイにあたるかもしれませんが、やはり「日記を書く」という企画に従ってか、エッセイよりもいくらか等身大な文章に感じられました。吉本ばななが日々の記録と所感を飾らずにそのまま書き落としてるイメージです。
とくに食、映画や展覧会などの鑑賞、友人との交流といった内容が多かったです。あらゆるコンテンツをインプットして感性を育てているのは、やはり表現者だからなのかと思います。
個人的に11月8日、四角大輔さんに会って創作アドバイスをした話に驚きました。元音楽プロデューサーでヒットメーカーの四角さんとの繋がりが不思議です。
【日記】と【エッセイ】は読み手がいるかどうかの違いあります。日記は事実や感情の備忘録としての役割が強く、エッセイは読者の興味や共感を引き付けるように書かれますね。
日記のような個人的事実でさえも読み手の興味を引くように、日記とエッセイのバランスを考えて執筆されている印象でした。
装丁が綺麗

函入り本になっており、お洒落なパターン柄のスリップケースです。

装丁はビニールのような頑丈でしなりがある質感。タイトルとカバーイラストが銀の箔押しで施されています。
手帳に近いような触り心地で、ずっと持ち歩いても本が角からボロボロになっていくようなこともなさそうです。
私はかばんに1ヶ月ほど入れて、少しずつ読み進めました。365日で1日ごとに区切られているので、ほんの数分でも読み進めやすかったですね。
DR BY VALUE BOOKS PUBLISHING
この本は一般的な書籍とは異なる形で流通しています。
DR BY VALUE BOOKS PUBLISHING(ディーアール・バイ・バリューブックス・パブリッシング)は、バリューブックスの直取引レーベルです。
バリューブックスの販売サイトと、一部の書店・小売店のみで販売されています。取次を介さないため、一般的な書店や大手通販サイトで購入できる本ではありません。
DR(ダイレクト)には、顔が見える関係性の中で直接本をお届けする意味が込められており、広く流通しないぶん、著者や書店への還元率が高く設定されています。
丸善やTSUTAYAなど大型本屋では基本的に取り扱っていません。私が住む岐阜県でも購入した店舗を含めて、県内に2つの個人書店のみでした。
本は薄利だといわれているので還元率が高いのは素晴らしいですが、実店舗と通販ともに買える場所が限られると部数が伸びないので、結果的に売上はどうなのだろうと考えてしまいます。
希少性が高く装丁も凝ったものなので、大事にとっておきたいと思える本でした。






