【ソロー森の生活を漫画で読む】後世アメリカ文学に影響を残した超絶主義をサクッと読む
著者 | 出版 |
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ヘンリー・デイヴィッド・ソロー | いそっぷ社:2018/10/17 |
ジョン・ポーサリーノ(編/絵)
金原瑞人(訳)
シンプルな生き方を提唱した名著の誉れ高い『森の生活』
実際に読むと長大で難解なこの作品を、選び抜いたソローの文章とジョン・ポーサリーノによるシンプルな描線で漫画にしたのが本書。
後半には引用されたソローの文章を訳出し、その言葉がどんな文脈で書かれたのかを解説している。
ソローの遍歴
大学卒業からパブリックスクール辞職の理由、執筆業で生計を立てる動機、森での生活、政府への意思表明、森での生活実験終了後の講演活動までの遍歴が記されている。
ソローの1845年3月~1847年9月までの日記は、アメリカ文学を代表する「森の生活」として出版され、これに触発されて多くの国立公園が生まれていることや、生態系保存活動を促していることを前提にしておく。
また、エッセイ「市民としての反抗」こちらも20世紀のイギリス統治に対するインドの独立運動や、アメリカの公民権運動などに影響を与えた。
ウォルデン湖での生活
四季を感じ、動物の足跡を追い、ハンノキやブドウなど自生する植物、ウォルデン湖の情景を眺める。2エーカー半の土地にインゲン豆、ジャガイモ、トウモロコシ、エンドウ豆、カブを植えた。
農作業して、1~2時間休息して、昼食をとり、泉のそばで本を読む。
そうやって自然と一体になっていく中で気がついたのは、すべては神秘的で果てしなく、自然を味わい尽くすことはできないこと。
人は容易いルートばかり歩くから、何度も行き来するうちに踏みならされ、伝統や文化という轍が刻まれる。だから森へ行くのはそんな流れへの逆行ともいえる。
感想・書評
漫画とありますが、実際にはイラストをぽつぽつと単純なコマでつなぎ合わたような、シンプルな線の絵本調の本です。思考をセリフ化して、コマとアンニュイな無言の表情だけで文脈を補完させる特徴的な漫画です。それがソローらしさを引き出してるようで、シンプルな構図だけどじっくりと時間をかけて読んでしまいました。
内容としてはソローを何も知らない人からすると、なんとも虚無的な無感動なストーリーに思えるかもしれません。しかしそれが現実ですし、そこに本来の生きる本質を見出す価値があります。
ソローは隠者ではなく、森の生活でも多くの客人を招き入れていましたし、自分が村に足を運ぶことも度々ありました。彼の見立てでは、子供や女性は森の中が好きでしたが、商売人や農夫に限って仕事と孤独の話ばかり気にしてくるそうです。社会生活の中で人々の大事な感性が失われていくことを嘆いているようですね。
後半には抜粋解説文もあるので、漫画で抽象的に表現してる部分はそちらで追って理解するといいでしょう。ジョン・ポーサリーノが、いかに言葉少なに「森の生活」を捉え、ウォルデン湖の静寂やソローの静謐な思考を再現しているかが分かってくると思います。