彼女は頭が悪いから|姫野カオルコ
タイトルは、被害者女性を暴行した心情について問われた際、加害者学生のひとりが公判で実際に口にした言葉から取られています。
この小説の題材は、2016年5月、東京大学工学部の学部生・大学院生ら5人が他大学の女子学生に対する強制わいせつ・暴行で逮捕された事件をもとにしています。
彼女は頭が悪いから

姫野カオルコ
文藝春秋
2018年7月20日
彼らはぴかぴかのハートの持ち主なので、裸の女がまるまって、ううううと涙を垂らしている状態は、想定外であり、優秀な頭脳がおかしてはいけないミス解答だった。結論彼らがしたかったことは、偏差値の低い大学に通う生き物を、大嗤いすることだった。彼らにあったのは、ただ「東大ではない人間を馬鹿にしたい欲」だけだった。
あらすじ
偏差値48の女子大学に通う美咲、東京大学理科I類に進学したつばさ。本来なら交わることのない2人の人生が、小さなきっかけから交差していき、ある事件に進展する物語。
美咲は地元の進学校を卒業後、家族に祝福されながら女子大学に進学します。一方、つばさはエリート家庭で育ち東大に進学するも、周囲の富裕層や優秀な同級生に劣等感を抱くことがありました。
二人は大学生になってから偶然出会い、最初は恋愛のような関係が始まるかに見えました。しかし、つばさを含む東大生5人が引き起こした強制わいせつ事件により、二人の関係は加害者と被害者という最悪の形で交わることに。
感想
結構長い本なのですが、中盤に差し掛かってようやく二人の主人公が話の中で交差します。つまり本書の前半~中盤にかけてじっくりと、人物の育ってきた背景や性格について描いているわけです。そうして人物の思想的な輪郭を丁寧に追っていくことで、どうしてこのような歪んだ事件が生まれてしまったのかを表現できていると思います。
姫野カオルコはこの小説を通じて、事件の背景にある社会的な構造や人々の無意識の差別意識を掘り下げようとしました。特に、加害者たちが持つ「自分たちは優れている」というエリート意識や、被害者が受けた不当な扱いに焦点を当てています。また、事件の詳細を忠実に再現するのではなく、フィクションという形で普遍的な問題を描くことを意図しています。
実際の事件はWikipedia等でも簡単に調べられますが、事件の概要だけを追ってもどうしてこのような犯罪に繋がったのかが想像し難いもの。それを小説として人物の思想や心情の機微などを表現することによって、よりリアルに感じられるようになります。











