羆撃ち|久保俊治
私が北海道に住んでいた20歳の頃に知人に薦められ、買ったものの8年くらい積読していた本でした。本というものは「読もう」って気が強いうちに読んでおかないと、その気がどんどん薄れていきますね。
しかし読んでみたらこれまた名作。なぜもっと早く読まなかったのだと思える物語でした。
羆撃ち

久保俊治
小学館
2009年4月20日
旨い。手負いで苦しんだり興奮して死んだ獲物に比べて、苦痛や恐怖をほとんど感じることなく斃された動物の肉はこれほどに旨いものなのか。
あらすじ
久保さんの狩猟に対する思いの変遷を辿ったエッセイ調の自伝です。久保さんは日本の狩猟業界では知らぬ人がいないであろう伝説のハンターとなっています。それは彼の獲物に対する誠実さと、ハンターとしての矜持が備わっているからでしょう。
父の影響で幼少期からサバイバルを経験し、大学に進学すると銃の所持許可を得て父から村田銃(ライフル)を譲り受ける。
標津町で羆による被害が多発していたため、移住して標津をホームグラウンドに。優秀な猟犬と共に、単独猟を極めることを決意。
日本でハンターとして生計が立ち、次なる目標は本場アメリカで腕試し。アウトフィッターズ・アンド・ガイズ・スクールをトップの成績で卒業。
離農した牧場を引継ぎ、家庭を持って、その後もハンターとしての活動は継続していました。アメリカのハンタースクールの日本法人も立ち上げました。※2024年4月10日 76歳で逝去。
感想
エッセイ調なので平易な文章で分かりやすい内容です。久保さんの性格から淡々とした調子ですが、ときに感情の高ぶりをみせる熱のこもった文章になっていてメリハリがあります。時系列に沿って書かれているのも読みやすいポイント。
幼少の頃に猟の魅力にとりつかれて、大学卒業してからプロとして単独猟を極め、最高の猟犬を育てあげ、渡米して本場のハンターの世界で活躍し、帰国してからホームグラウンドの標津に根を下ろします。数々の苦労はありましたが、結果だけ見てみると常に向上心を持って順風満帆に駆け上がったイメージでした。
食事シーンを描写するのが特に上手で、獲ったばかりの羆やシカの心臓を焚火にあぶって、焼けたところからナイフで削いで食べるのはハンターの特権です。シカ肉の刺身、川で獲った魚を混ぜ込んで飯盒で炊いたご飯など、どれも美味しそう。
味の表現が優れた料理エッセイとはまた違う、自然の中で命のやりとりをした状況から生み出された食の見せ方がそうさせてるのかもしれません。

相棒の猟犬はアイヌ語で火の女神を意味する「アペ・フチ・カムイ」から。この本の表紙イラストになっています。









