重版出来!
「重版出来」とは初版と同じ版で刷り増すことで、すべての作家と出版社が好きな言葉。
重版出来!

松田奈緒子
小学館
2013年3月29日
全20巻
「悪口言われるほうがいいんですか⁉」
「そりゃそうだよ~、そんだけ自分のファン以外にも届いたってことだもん。よく持ち込みの新人が、目の前で読まれて恥ずかしいとか緊張して編集者を見れないっていうけど…一番最初の読者である編集者が、自分の作品を読んでどんな反応するか、自分の描いたもので勝負しようってんだから、気にするのが当たり前だろ。」
あらすじ/概要
週間コミック誌編集部の新人編集者・黒沢心を中心に、漫画や出版物に関わる裏方にスポットを当てたお仕事漫画。
作家のメンタルや人間関係、編集者の数字へのプレッシャーと個性、売り出し方のSNS戦略など、漫画に関わる人たちの人間模様がリアルに描かれています。また、グラビア撮影、画集出版、美術本など漫画以外の出版物なども取り上げて、出版業界独自の慣習や事情などを分かりやすくストーリーにしています。
二人の新人作家を抱えることから編集者としてスタートした主人公・心は、周囲のベテラン作家や編集者にも支えられながら、作家と共に着実に成長していきます。
感想/考察
全20巻となっており、新人編集者・黒沢心が、発掘した天才新人漫画家をデビュー・連載・アニメ化と成功へ導いていく物語です。同時に作家の仕事面だけでなくプライベートや精神面にも焦点を当てながら、枝葉のショートストーリーもはさんでいきます。
正解のないクリエイティブな仕事をテーマにしているだけに、人物たちの悩みも多いものになります。だからこそ人の心に刺さる名言が頻出します。
作家と編集者が二人三脚で歩んでいく本作。その制作の裏では多くの人の関りや人間ドラマも見えてきます。売れる作品を描く人は良い作品を描くのはもちろん、いかに読者や作品を愛しているか。デビュー後に息長く活躍する人ほど成長と変化があり、人間力に優れ、愛される人なのだと実感します。
HEADING
【漫画の映像化】
漫画原作を映像化するにあたっての、原作者と制作者の折り合いの難しさが取り上げらました。このセンシティブなテーマは、場合によっては人命に関わるほどの問題をはらんでいます。
興行を優先したキャスティング、大御所俳優の使いどころ、原作と脚本の違い、あらゆる大人の事情が絡んでいるのが分かります。なぜ原作通りにならないのか、なぜ設定が変わるのかといった事情が少しだけ理解できました。
【web漫画の台頭】
バイブスでweb漫画誌を始める話が立ち上がった話。連載も単行本化もPVで決定、ジャンルも設けずセグメントの垣根を超えた連載で個人の好みを反映させるという方針でした。
しかしまだwebでコンテンツを発信する黎明期で、紙の雑誌に対するプライドなどからも反対意見も少なくない。
そこで部内で数字にうるさいヒール役だったベテラン編集者が「このまま何もしなかったら、紙の雑誌どころか漫画文化自体もなくなってしまう。今、やるべきです。」といって強気でおし進めます。局長にもしっかりと話を通し、企画を通した手腕に感心したシーンでした。
【刀剣美術本プロジェクト】
バイブスの人気漫画家の登場キャラクターにちなんだ刀剣に関するプロジェクト。巷で流行りの刀剣女子を取り込む形で、刀剣に関する美術本を出版することになりました。
しかし刀剣は権利関係が複雑で御物や個人蔵など一律ではなく、掲載許可を取るだけでも苦労するもの。掲載料や画像代が高額になることもあるそうです。さらに刀剣は光の芸術でもあり撮影が極めて困難な対象で、新撮となるとさらに費用がかさんでしまう。
このような業界裏話や制作秘話はとても興味深い内容でした。









