【サンコンのとっておきアフリカむかし話】アフリカ動物寓話を読んでみる
著者 | 出版 |
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オスマン・サンコン | 金の星社:1989/06 |
本書イラストは「かじ・あゆた」
あらすじ
サンコンさんのふるさとギニアの田舎村は電気もないような土地。
80歳を超えたおじいさんが子供たちを集めて昔話を聞かせてくれる慣習があります。ギニアではひとりの老人が死ぬのは大きな図書館が焼けるのと同じことといういわれがあるほど。
多くの動物が生息するアフリカでは、ウサギ、ライオン、ワニなど動物をモチーフにした話がメジャー。そして最後には必ずなにをいいたいのか、人々になにを教えてくれているのかといった教訓も含んでいます。
生活も文化も風土も異なる日本とギニアの架け橋となってくれる著者のサンコンさんが、ギニアを日本に知ってもらうきっかけのためにとこの本をまとめました。
本書から「三人のくいしんぼう」のあらすじを紹介します。
3人のくいしんぼう
ギニアに3人のくいしんぼうが住んでいた。
3人とも決してお腹がいっぱいになることはなく、常にお腹を空かせて、村の人々も彼らのためによく食料を分け与えていたが、いくら食べても足りないと言ってちっとも感謝しない。それどころか他人の食べ物まで欲しがる始末。
だんだんと村人にも嫌われて居づらくなった3人は、食べ物を求めて村の外に出るようになった。
果物の木
ジャングルは動植物が豊富だからいろいろな果物や木の実があるだろう。そうしてジャングルの中を歩きだすと、さっそく果物のなった大きな木を見つけた。
すでに歩き疲れてお腹が空いていた3人はこの果物の木をみて大喜び。
しかしその木は4メートル以上も見上げる大きな木で、誰かが木に登らなければならない。3人はじゃんけんをして負けた1人が木に登って、上から果物をもいでは落とすのを繰り返す。
たちまち下で待ってる2人が落ちた果物をすぐさま食べるから、木の上のくいしんぼうは自分だけ食べられないのを心配して、いっそ木を思いきり揺らして果物をたくさん落とした。
食い意地はりすぎ
しかしそのはずみでくいしんぼうは木から落ちて死んでしまった。それを見た2人は分け前が増えたとばかりに喜ぶ。
そのうちのどが渇いてきた2人は、今度はじゃんけんで負けた一人が水をくみに川まで行くことに。負けたくいしんぼうはしぶしぶ川に行くが、果物をすべてひとり占めされないか心配だったので、待っている男を見張りながら後ろ歩きで川まで歩いて行った。
すると川岸で大口を開けて待ち構えていたワニの存在にが気が付かず、水を汲みに行った男はそのままワニに食われて死んだ。
食べ物への感謝が大事
残った最後のくいしんぼうは水を汲みに行った男がいつまでも帰ってこないから、しめたとばかりに果物を全部ひとり占めして食べ始めた。
木になっていた大量の果物をすべて食べてしまったが、水も飲まずに詰め込んだものだから、お腹がみるみる膨れ上がりこれ以上膨らまないというほどになると、パーンと破裂してしまった。
こうして3人の食いしん坊はみんなすっかりと死んでしまいました。
感想・書評
あまりに食いしん坊だと食べ物の取り合いで争いが起き、ワニのようにがっつかずに構えていれば食べ物のほうからやってきてくれるということを教えてくれる話。
食べ物の恨みは怖いというのは万国共通のようですね。
実はかなり幼いころに読んだ本でして、この食べ過ぎてお腹が破裂するという話のインパクトが強烈に記憶に残っています。このころは本当に食べ過ぎたらお腹がはちきれるかもしれないとちょっと信じていました笑
挿絵もコミカルな感じが良く、3人の食いしん坊の醜さと愚かさを表現するような、卑しい表情をうまく描いてます。木から落ちた食いしん坊が果物の山に埋もれて死んでいるその隣で、3人目の食いしん坊がむしゃむしゃ果物を食べている様子に少しトラウマがありました。
本作の果物がおそらくパパイヤなので、大人になってもパパイヤを見るたびにこの本のシーンが思い出されます。
おそらく絶版なので、もし興味があれば図書館等で読むといいです。子供向けなので小学校低学年くらいの子に読んでもらうとよさそうです。