2024-09-23

【スターティングストレングス】ウェイトトレーニングの本として最高のベストセラー邦訳版

著者出版
Mark Rippetoe
八百健吾(監訳)
医学映像教育センター:2019/04/05

ウェイトトレーニングに関する書籍として出版業界市場最大のベストセラーとなった本書を、4年かけて古い内容や不完全なものを更新した第3版。

概要

本書は5種目の主なバーベル種目に対象を限定し、それぞれを何十ページにわたって詳細に説明している。バーベル種目は多くの筋群の動員、可動域、高重量を持ち上げるポテンシャルが高い運動だ。一般的な多種目エクササイズより効率的な内容に絞り込んでいる

やり方だけでなく、バイオメカニクスや解剖学の観点からの「なぜそのやり方か」までの解説を含んでいる。背景知識があることで効果的で説得力のある運動ができる。

鍛える理由

運動がパフォーマンスにどういった効果があるかを考えるよりも、身体は運動という刺激があることで本来の状態に戻ることができるのが本書のスタンス。

なんらかの問題が起きたときにそれを正すために運動をするのではなく、問題がなくてもやらなくてはいけないもの。運動をしなければ必ず問題が生じる。

好むと好まざると関わらず、体力は生きていく上で最も重要なものだ。

なぜバーベルか?

そもそもマシンの始まりはアーサー・ジョーンズが、ノーチラスを開発したところから。当初、身体をハードに鍛えるにはバーベルの扱いを覚えるしかなかったため、革命的でビジネス的にも大成功した。ジムにとってもスタッフ教育のコストが大幅に削減される。

しかしマシンサーキットはとても効率が悪く、ある人がバーベルに切り替えてから1週間で、12台のマシンで鍛えた何ケ月もの期間全体で増えた体重以上の増加もあったという話もある。

人体は全体がひとつのシステムとして機能するものであり、マシンによって部位ごとに分割して鍛えるのは道理にかなっていない。なぜならマシントレーニングで得られた筋肉を、日常動作で同様の使い方をすることがないからだ。筋力を鍛える動作パターンを、通常時の動作パターンと同じでないとならない。

バーベルによって多関節の可動域全体で正しく行うと、人体の骨格や筋肉の構造が荷重下でどう働くかが表れる。つまり身体のデザインに沿った自然なかたちでウェイトを動かすことで、最適な形で効果が出る

さらにバーベルは経済的に取り入れやすいというメリットもある。

しかし唯一の問題は、圧倒的大多数の人が正しいやり方を知らないということ。

プログラム作り

人間の成長には適応の根幹があり、適応力を越えたストレスを突破することで初めて次の段階に成長できる。

トレーニングにおいても、挙上重量は行う頻度に対して適応するものではなく、バーベルを挙げることからくるストレスに対して適応する。重量、レップ数、挙上速度、セット間休憩などのあらゆる変則要素がある。

また、ストレスは回復できるものに調整しなければならず、段階的にストレスを与えて適応を蓄積させる手順を踏んでいかねばならない。

【収穫逓減の法則】
個人の遺伝的限界のグラフによると24ケ月までの初心者の成長はすさまじくトレーニングもシンプルなもので十分、そこから48ケ月までの中級者、それ以降の上級者となるとトレーニングはより複雑になり筋力パフォーマンスの伸びもゆるやかになる。

レベル別トレーニングの考え方

初心者が最も高い効果を求めるなら「負荷となる要素を毎回少しずつ高め、その負荷の高まりに対して適応が起こる限り続ける」

中級者は回復が間に合わなくなり、その回復を念頭においたプログラムを取り入れる段階にあり、最大筋力を発揮するトレーニングを頻繁に取り入れることでより速く成長できる。

上級者になると遺伝的限界に近いところでトレーニングを行うので、オーバートレーニングにならないように注意して強度とボリュームを調整する必要がある。

漸進性に応じてメインセットの重量をあげていく。停滞するまでの期間には遺伝的な個人差がある。種目の組み合わせはシンプルでよく、種目数を増やすのではなく重量を伸ばすことを意識する。

挙上重量の大きな順に、デッドリフト>スクワット>ベンチプレス>パワークリーン>プレス、これらの順に明らかな入れ替わりがあるようなら根本的に何か問題がある。

バーベル種目で最初にマスターするフォームはスクワット。最も重要な種目で他の種目すべてに影響する。次にプレス、デッドリフト、ベンチプレス、パワークリーンの順。パワークリーンは最もテクニカルで、そもそもデッドリフトが礎になっているのでこれらを先にマスターしておく必要がある。

プログラムの組み方

ウォームアップセットを4段階1~2セットで、最初はシャフトのみから始める。最後のウォームアップはメインセットの85%~90%程度を1~2レップ1セットでいい。

メインセットを5レップ3セット程度で繰り返し伸ばしていくイメージ。

※1RMと20RMではその適応が全く異なることを理解した上で、1セット5レップの5RMが初心者の効果の高い妥協点になる。

重量の増やし幅はメインセットの重量を伸ばすのを基準、正しいフォームで週3回トレーニングを行う男性を前提に、最初の2~3週は5㎏ずつ、そのあと数か月は2.5㎏ずつ伸びると順調。

栄養と体重

十分な運動ストレスに加えて回復を促す食生活が成果を生み出す。この人為的な急成長は高齢になるほど縮小していってしまうので若い時ほどいい。

運動して、食べて、休むのが最大限の前提。

若い細身の人がちゃんと食べながら正しいバーベルトレーニングを実践すると、2週間で5~7.5kg増量もあり得る。

「ちゃんと食べる」とは、1日4食、肉と卵をたんぱく源とし、野菜と果物をたくさん摂り、牛乳をたくさん飲む。全体の食事量は3500kcal~6000kcalで、体重1㎏あたり2g以上のたんぱく質を摂取する。

手っ取り早い増量法は牛乳を1日1ガロン(3.78リットル)飲む。手に入りやすく、調理不要で、急成長する哺乳類にとって必要な要素が揃っているから。

感想・書評

Youtubeで筋トレに関する情報を非常に理論的に解説するかたがいます。そのかたが参考にしていたのが本書(英語原版)だったので、日本語版もあるのならと買ってみました。

まずこの本の専門性の高さから値段が高い…。5,800円(税抜)なので、大学の参考書としても使われるレベルですね。そのぶん内容が充実していて、バーベル種目の正しい知識を入れるならこの本一択だと思います。

筋トレ本は数多くありますが、1つの種目を見開き1ページ程度の浅い内容ですませる本が多いこと。サイドレイズやレッグエクステンションのような、単関節運動なら簡単に理解できるかもしれませんが、スクワットやデッドリフトのように複雑な多関節運動で且つフリーウェイトについては見開き1ページ程度の短い説明では適切なやり方は身につきません。むしろ怪我などのリスクにもつながります。

バーベル5種目に加えて、有効な補助種目というのも記載されていますが、基本的にはバーベルメインの解説本となっています。

全体的に専門性の高さと、一つの内容に対する深さからトレーナー向けの本だと感じます。ある程度トレーニングの知識と経験がある人が、さらに深い理解を得るのに最適です。

現在はYoutubeなど分かりやすい動画教材が世の中にいくらでもあるので、初心者はそういったものから実践して段階的に知識を磨いていくのがよさそうです。

原本が海外なので、例えば栄養に関する内容が3500~6000kcalなどとてつもないカロリーになってましたね。日本と欧米で基準が異なる点もあるので、その点も踏まえて読み進めていいく必要があります。

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