2023-08-28

【老人と海】男の矜持がつまったヘミングウェイ代表作

著者出版
アーネスト・ヘミングウェイ
高見浩(訳)
新潮文庫:2020/07/01(新訳版)

1952年本作「老人と海」でピューリッツアー賞、ノーベル文学賞を受賞した。

あらすじ

年老いて落ち目となったひとりの漁師が、年齢による衰えにも抗いながら、3日3晩大物カジキと海で格闘。

非常にシンプルなストーリーで、極論ただおじいさんが大きなカジキを釣り上げて帰ってくるだけ。ひたすら一人で孤独に3日間船の上でカジキと格闘してる。

無理に引き上げようとしても綱が切れるから、体力がなくなるのを待つ。水も食事もかなり少なく、ほぼ不眠不休。ようやく大物カジキを釣り上げた後、さらなる試練が老人にふりかかる。

自然の驚異に屈しない老人の意地とプライドが、まっすぐと淡々に描かれいてる。

老人と少年

老人サンチアゴのかつての異名はザ・チャンピオン。歴戦の漁師で、その体つきや傷までもがたくましい。

しかしここ最近はずっと不漁続きで、ついにサンチアゴも落ち目となった。

少年マノーリンはサンチアゴのことをずっと慕っていたが、彼の不漁が40日続いたころ、ついに船を降りるように親から言われる。それでもかれはまだサンチアゴの船に乗りたかったし、一緒に漁に出たかった。そんな少年が、老人の最後の漁になるであろうことを悟りながら彼の出港を見送る。

サンチアゴの出だしは長年の経験により万事順調。日が昇るまでに仕掛けを準備し、堅実な手順でぬかりはなかった。

舟を波任せにしようとしたところ、ついに鉤にカジキがかかる。

老人とカジキ

かなりの大物か思うように引き上げられず、カジキの体力が底をつくのを待つしかない持久戦に突入。4時間カジキに綱を引かれながら、老人はそれをただひたすら支え続ける。舟はカジキに引かれ続ける。

手を攣って、擦り切れて、背なかを痛めて、休憩もとれず、綱にかけてから、丸一日たった頃、カジキがようやく海面に姿をみせるた。舟よりも2フィートは長い。

その後も均衡した引き合いが続き、綱を支えながらどうやって飯を食い、休息をとるかにあくせくしてる。どうにか体勢を整えて、綱の引きを保ちながら数十分の仮眠をとった。

すると突然カジキが跳ね出して本格的な戦いに。

とうとう2晩を明かして3度目の日の出。カジキと舟の距離を縮めるチャンスが巡ってきた。綱をどんどんたぐり寄せて、船べりで銛を突き下ろしてなんとかしとめる。

老人と海

カジキを舟にくくりつけて家路につこうとするも、カジキの血を追ってサメが迫ってきた。

サメがカジキに食らいつくので、銛をついてなんとかサメもしとめるが、40ポンドは肉をちぎられた。しかもそのせいで、また血を追って次々サメがくる。5〜6匹と次々と来るサメをしとめるが、カジキの身はどんどん削られていく。

漁に出て3日目の夜にやっと街の灯りが見えてきた。

ゴール目前だがサメは次々と襲ってくる。棍棒でひたすら応戦するものの、次第に有効な対応手段を失っていき、カジキはさらに損なわれていった。

港に着くと数日の疲れがどっときて、マストを抱えながらなんとか家に帰りつく。それから老人は倒れるように眠った。

老人と手

翌朝マノーリンが老人の家に様子を見に行くと、まだ寝てる老人の手のひらを見て泣き出す。

港では漁師たちが老人の船と、くくりつけたボロボロの巨大なカジキを取り囲んでざわるいていた。

カジキは18フィート(5m半)もあった。

感想・書評

読者視点だと釣りや漁にあるていど関心がないと想像しにくい状況が多いなとは思ってました。舟はオールを漕いだりしてるから小さいもので、使ってる道具や操作などはなんとなく理解できます。

野球選手の話も頻繁に出てくるので、巻末の解説に続く翻訳者の「翻訳ノート」を先に読むことをおすすめします。当時のキューバーとアメリカの野球事情と、老人が出航する海の実態について補足がされています。

老人は今回の漁以前は3か月近く全くの不漁だったから、周囲からはもう落ち目だとされていました。そんな状況で、老人が漁師としてのプライドを携えて、慕ってくれる少年のために最期にひと花咲かせた話。

読み手の感動を誘うような湿っぽい感じではなく、「ついにやったな」という感じで静かに感動させるドライな読みごたえでした。これがいわゆるハードボイルドといわれる感覚なのかもしれません。

状況自体は船上で水中のカジキとひたすら膠着状態、場面転換がなく老人の独り言とモノローグが続くので、少々退屈で読みつかれる気もします。

また、老人は決して嘆いたり、状況を悲観したりはしません。サンチアゴの海に対する敬愛が彼を支えてくれたいたのでしょう。そんなサンチアゴでも弱音をもらすのが、船の上で何度も「あの子がいればな」とぼやいて、マノーリンが心の支えになっていたことも伺えます。

一方でマノーリンも、上手な漁師はたくさんいるけど、おじいさんみたいな最高の漁師はほかに一人もいない。二人が信頼し合っていたのがわかる素敵な関係です。

そんな信頼関係が最後のシーン、マノーリンが老人のぼろぼろの手の平を見て泣くところにいきてますね。老人の帰りが遅かったのを心配していたのではなく、帰ってくることは信じていたし、そのうえで漁師としての誇りを見せられたことに感動したように思われます。

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