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【自分のアタマで考えよう】独自の視点で意見を持つための社会派ブロガーの極意

「知っている」と「考える」はまったく別モノ。

知識は過去の事実の積み重ねで、思考は未来に通用する論理の到達点です。知識の多くは過去において他の人が考えた結果を書籍や講義から記憶しているもので、考えるべき時に知識を取り出すのは他人の思考をただ提示することに変わりません。

この本では自らの頭で考えるための重要なプロセスが解説されています。

ちきりん

政治・経済・国際関係・ビジネス・キャリア・流行など幅広いテーマを、独自の視点や切り口で捉える社会派ブロガー。

概要

会議に結論が出なくてずるずると長引くことがよくあります。何かを決めるときには「情報」とは別に「意思決定プロセス」が必要なのです。

例えば買い物において価格情報をひたすら収集するのではなく、上限の値段を設定してフィルタリングすること。なんとなく夕食を考えながらスーパーへ行くより、メニューとレシピを決めてから買うべきものをリストアップすれば時間もお金も無駄がありません。

意思決定においては今求められている情報に集中することが大切で、最初に考えておくべき決めるプロセスというものがあるのです。

思考は情報収集作業ではなく、インプットした情報をアウトプットして結論に導く変換プロセスです。仮の結論でも間違っていても、なんらかの結論にたどり着くべきでしょう。

「なぜ?」「だから?」と問う

数字を見たら二つの問いを立てます。

数字の背景を探る「なぜ?」と、データの先を考え予測する「だからなんなの?」の二つ。

なぜ売り上げが伸びてるのか、そしてそれは来月にも続くのかあるいは落ち込むのか。数値で反映された事実を、人より深く読み取るために必須の考え方です。

判断基準はシンプルに

選択肢が多く判断基準が複雑になると物事の決定打が欠けます。

レストランを選ぶにしてもジャンル、味、口コミ、雰囲気、価格、立地、予約など総合的に勘案すると必ず一長一短になってしまう。だから予算は〇〇円といった条件を作って判断基準を絞っていくこと。いくつもある判断基準はすべてが同程度の重要度ではないので、その時々にもっとも重要な基準を見極めて判断する決断力が試されています。

判断基準の決定プロセスの一例に、婚活女子マトリクスにおける「相性」と「経済力」があります。相性も経済力も基準以上ならOK、どちらも基準外ならNGとなるのは明確。問題は相性と経済力のどちらかが基準を満たさないときに、どちらの基準を優先して判断材料にするか。

そこで自分軸と相手軸で考えてみましょう。相性は自分の慣れや努力次第で調整できますが、経済力は相手次第になってしまうところが大きいです。つまり相性が良くても経済力のない人より、相性がいまいちでも経済力のある人のほうが婚活女子から見た価値は高い。このような視点を持つことがシンプルな判断基準を備えるということです。

現実的にはもっと複雑な問題が多く、簡単に判断基準を絞り込むことはできませんが、思い切ってシンプルに削っていくことで本質が浮かび上がります。

データをトコトン詰める

本書では日本の自殺人口の多さとその原因データを例に出しています。

全体の自殺要因の多さを数だけで見れば健康問題が顕著で、次いで経済問題が多い。高齢化やうつ病の増加から健康問題と直結させてしまうが、見方を変えると違った側面が見えてきます。

自殺要因を男女別に並べなおすと男性の経済問題が多い。さらに年代推移をみると1998年に男性自殺率が高く、その時代背景には経済危機による金融業界の混乱が関係しています(日本列島総不況年)

対して女性は健康問題がぶっちぎりで多いが、経済問題においての自殺率は相当に低い。

自殺概要資料を一つとっても、ただ表面的な数値をなぞったものと、深く読み込んで考えた内容から受ける印象は大きく変わってきます。

知識は「思考の棚」に整理する

知識と思考の最適な関係は「知識を思考の棚に整理する」ことです。これによって個別の知識が意味を持ってつながり、全体として異なる意味が見えてくることがあります。この統合された知識から出てくる新たな意味を洞察と呼びます。

思考の棚を持っていると、次に知りたい情報を意識的にとらえることができるようになり、欲している情報に敏感になれます。これが知識の正しい格納。

さらに常日頃から考えた仮説を格納しておけば、裏付けとなる新たな情報を入手した際に、瞬発力のある思考の結論を導き出せます。気の利いた意見を述べる頭の回転が速い人は、こういった知識と思考の整理がしっかりできている人です。

書評

2005年から自分の思考をブログに書きしたためている、社会派ブロガーちきりん氏による著書。TwitterやVoicyでよく見ますが、とても参考になる話や的を射た意見が多いです。

SNSで影響力の大きい人にありがちな、とがった発言なども見られないような気がします。きっと長年インターネットを渡り歩いてきた、処世術のようなものがあるのでしょうね。

自分のアタマで考えた意見が常に支持されるとは限りませんが、借り物の意見やつまらない感想を述べる程度から脱却した、社会人としての品のある議論には欠かせないスキルだと思います。

テレビのニュースを見て「へ~」と頷いて次の日には内容を忘れてしまうような人に、思考力を鍛えるトレーニングとしておすすめできる一冊です。

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自分のアタマで考えよう 知識にだまされない思考の技術
ちきりん

月間200万PVを誇る人気ブログ「Chikirinの日記」の筆者による初の完全書き下ろし、11万部突破!

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【すごい左利き】なぜ一般的に左利きがすごいと言われるのか

左利きの人なら気にせずにはいられないタイトル。そして多くの左利きが「天才タイプなんだね」「器用だね」といった言葉をかけられてきたことでしょう。

しかし「左利き=天才」なわけではありません。右利きとは異なる脳の使い方によって、同じ経験から感じることとアウトプットする内容が変わるため、大多数とは発想が違うということになる。これが左利きの人が特異な目で見られる所以でしょう。

また、基本的に世界は右利き中心のデザインなので、右利きのツールや設計を快適に利用するための試行錯誤が求められる場面も少なくないです。それが結果的に左利きの人の脳のバランスを向上させ、器用だねと言われる人が多いのかもしれません。

このような左利きのすごさを脳科学の観点を交えて考察されています。

加藤俊徳

脳内科医・医学博士・加藤プラチナクリニック院長・株式会社「脳の学校」代表。世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。

脳番地による8つの仕組み

著者は「脳番地」という独自の見解に基づき、8つの脳の仕組みを定義しています。

  • 思考系
  • 伝達系
  • 聴覚系
  • 理解系
  • 感情系
  • 運動系
  • 視覚系
  • 記憶系

これらはそれぞれが独立しているわけではなく、一つの動作に対して相互連携して働きかけます。

同じ細胞でも役割が異なり、感情系でも左脳は自分の感情や意思を作り、右脳では他人の感情を読み取る働きをします。要するに左脳は言語系情報処理右脳は非言語系情報認識を得意とします。

しかし運動系は左右対称の働きで、利き手と反対側の脳がよく発達する傾向にあるようです。

多くの左利きは右利きの人より、脳をバランスよく使うために左脳がつかさどる言語処理へのルートが少し遠回りになる傾向にあります。つまり言いたいことのイメージは先行するけど、言葉がつながってこないという現象が起こりやすい。

左利きの人の主な特徴

左利きならではの特性や思考がいくつか挙げられていますが、とくに特徴的なものが以下の3つ。

  • 優れた直観力
  • アイデアと独創性
  • ワンクッション思考

左利きの人が生まれてくる確率は両親の遺伝によります。

  • 両親が右利き 9.5%
  • 片親が左利き 19.5%
  • 両親が左利き 26.1%

しかし、利き手を決定づける遺伝子はまだ見つかっておらず、現段階では遺伝に加えて生後の環境の影響があると考えられています。

直感に優れている

直感は単なる衝動ではなく、無意識下の膨大な脳の情報ベースから導き出している結論であることがあります。この潜在的な思考の結論が、論理的結論より良い結果をもたらす場合があります。これは論理的思考をベースにしたAIにも真似できない人間ならではの強みです。

左利きの多くは情報のイメージ保存がデフォルト。浮かんだことを意識的に右脳から左脳に移して、あえて言語化することで直感を形にして残すことができるようになります。もしあなたが左利きならメモを持ち歩くことを推奨されます。

豊かなアイデアと独創性

左利きは目で捉えた情報をイメージで記憶する傾向にあります。左脳で理論的にとらえると情報サイズは小さいが、右脳でとらえたイメージは情報サイズが大きいです。情報量が多くなるので、既成の枠に収まらない発想に繋げられるでしょう。

これを有用なものにするには、イメージ記憶情報を左脳に移して言語化する意識をもつこと。

コピーライト分野でも論理的な文章は右利きのほうが得意ですが、左利きはイメージを一言で表すような独創的な言葉を生み出すポテンシャルを秘めています。

ワンクッション思考

はじめはゆっくり理解するけど、コツをつかむと爆発的な応用力をつけるのがワンクッション思考。

右脳と左脳をつなぐ神経線維の太い束「脳梁」を介して頻繁に行き来する脳の使い方が影響しています。つまり両脳を刺激する機会に恵まれた左利きは脳を強くしているともいえます。
※右利きは左脳を多く使い右脳を眠らせてることが多い。

また、左利きはアウトプット速度が遅い傾向が見られました。並列情報である右脳を介して左脳にアクセスする特性に由来しておりワンクッションのラグが生じるからです。脳の瞬発力がないと悩む人も多いですが、これを解決するには脳の視覚系脳番地を鍛えることが効果的。

言葉を耳から聞いて行動に移す力と、その場の状況を目で見てから動く力の二つの脳の瞬発力があります。言葉は最後まで聞かないとすぐに動けませんが、視覚情報であれば瞬時に対応できます。具体的にいえば、とにかくしっかりと見て観察する力を意識すること。表情と顔色やしぐさ、道の途中の綺麗なものの発見、普段しない行動から得られる新しい体験などを、視覚系情報と結びつけるなど。

この鍛え方を応用して「見て真似させる」という行為が左利きの人の成長速度を高めるでしょう。

最強の左利き

左利きはもっと積極的に右手を使ってみてもいい。

左脳を刺激して物事を対比して考える力を養えるようになる。また人間は不自由な環境にあるほど創意工夫をこらして能力を伸ばす傾向にある。

左利きの特性から両方の脳を活用しやすいというのが大きなアドバンテージである。

書評

よく言われていることでもありますが、右利き優位の左脳は言葉や計算、論理的思考、による直列思考が得意。対して左利き優位の右脳は様々な情報が同様に浮かぶ並列思考の脳です。

左利きの人が左脳を鍛えるにはToDoリスト作成、日記をつける、ラジオを聴く、ブログやSNSで発信するといった言語化につながる活動が有効です。中でも外国語の勉強は脳番地をフル活用して左脳を成長させる最も効果的な方法です。単語の意味を覚えるために記憶系、感情系、思考系で文章をつくり、運動系を用いて書いたり話したり、伝えたいことを整理するために伝達系も活用します。

多くの左利きの人はこれまでの人生経験からも、両方の脳を活用しやすいという大きなアドバンテージを有しています。初めは不自由に感じるかもしれませんが、その不自由さから創意工夫をこらして積極的に右利きとなることで、最強の左利きになれるとされていました。

私自身も左利きでありながら、ツールによっては両利きのものがあるので、本書に書かれている両脳活用の希望の兆しは想像できます。積極的に右手(左脳)を使って両利きを目指すのは、脳科学的な観点から優秀な思考力を得るための新たなアプローチかもしれません。

実際問題は忙しい多くの現代人が、思考力という目に見えない成果の為に、両利きを目指そうなんてばかげたことは実践しないと思います。しかし右利き優先デザインの世の中で、左利きの人が強いられてきた小さな苦労は、両脳を刺激して優秀な脳の使い方をしてきたかもしれないという、自己理解を深めるきっかけにはなったかもしれません。

すごい左利き

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1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き「選ばれた才能」を120%活かす方法
加藤俊徳

「左利き」は天才? それとも…変人?何が得意で、何が苦手?そして結局、何者なのか?1万人の脳をみた名医が、最新脳科学ではじめて明かす10人に1人の「選ばれた才能」のすべて!